第四十四話「小さな友情」電子怪人デンジムー登場
第四十四話「小さな友情」 1
カプセルから、前転をしながら怪人が飛び降りた。
「電子怪人、デンジムー!」
デンジムーは、全身が青銅のように鈍い青緑色をしている。
胴体の太さに比べていかにも手足は糸のように細長く、地面を踏みしめている足の平と、握り締めている手の平だけは極端にがっしりとしている。
デンジムーの頭は偏平で、中央に寄った目と鼻と口と―いずれも金属面に彫り込まれているだけだが―が滑稽な表情を生み出している。
博斗か桜が、いまこの瞬間にデンジムーを見ていれば、おそらくそれが白黒アニメの鉄人二十八号とそっくりの容貌だということに気付いただろう。
「さて、デンジムー。第二、第三の神官のコアの復活は間近いのです。しかし、エネルギーが足りません。そのエネルギーを奪う時間を稼ぐために、陽動が必要です。わかりますか? お前がするべきことが?」
「もちろんです、ホルス様」
デンジムーは、ひょろひょろした腕の先に着いているスリッパのような手で、自らの胸をノックした。
すると、デンジムーの胸部がパカリと開き、しゅうしゅうと蒸気を開口部から吐き出しながらゆっくり上にスライドしていった。
開口部には、デンジムーの正体を示す機構群が収められていた。
銀色と黒の細かなパイプが糸屑のように縦横にめぐり、細長い筒が元気よくピストン運動を繰り返している。
開口部の中央には、ちょうどデンジムーの手の平と同じぐらい、三十センチ四方ぐらいの黒い膜が存在する。
かと思うと膜の中央がにわかに発光して、次の瞬間には、そこに白いムー文字が羅列されていた。
「地上の人間どもは、オレ達のものには及びもしないオモチャのようなコンピューターに頼って生活しています。そいつを、このオレのウィルスでメチャメチャにしてやりますよ」
「ウィルスですか」
ホルスはやや首を傾げた。
「スクールファイブの側にもなかなかの科学者がいるようですからね、そんな単純な方法でよいものか」
「心配には及びません、ホルス様。オレのウィルスは地上人の常識なんぞまるでくつがえす特別な性質を持っていますからね。コンピュータウィルスであってコンピュータウィルスにあらず。生きている本物のウィルスですから」
「ほう」
ホルスの瞳が興味を示して輝いた。
「空気から感染します。それに加えて強力な自己増殖能力を持っていますから、人間のチンケなウィルス対策なんぞおそれるに足りませんよ。最初の宿主のオレが死なない限り、ウィルスも死なんのです。まあ、見ていてください」
デンジムーはガシャンコガシャンコと特徴のある足音を響かせながら、部屋を去った。
それを見送ったホルスもまた、外套を翻し、動き始めた。
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