10
翌朝。
博斗は、眠い目をこすり、半ばうつらうつらとしながら雪を踏みしめて登校していた。
あの騒ぎで結局お流れになってしまったイブの日のパーティーを、今日やることになったのだ。
伸び過ぎた白いひげを無理矢理剃ったせいで、顎がヒリヒリチクチクとする。
眉毛は、とりあえずコンビニで染髪料を買ってきて、急ぎで黒く染めた。
なにが好きでこんなことまでせにゃならんのだと思わないでもないのだが、まあ、しかし、燕の心に傷を残さなくて済んだのだから、いいってことだ。
スノームーが降らせた雪はとっくにやんでいたが、積もった分が溶けるにはまだ何日もかかりそうだなと博斗は思った。
「あーーーーーーーっ! おはよーーーっ!」
後ろのほうから元気な声が聞こえて、博斗は眠い顔に緩い笑顔を浮かべて振り返った。
燕は、博斗に手を振ると、地面に残る白い雪の上を、ぱたぱたと元気に走ってきた。
「あんまり急ぐなよ。地面が凍ってるんだからな、走ると…」
「うきゃっ!?」
転んだ。
博斗は、そらみたことかと額に手を当て、燕のところまで歩いていった。
「はいっ! 立ったよ」
燕はぱんぱんとスカートについた雪を払った。
「おはよう、はくと!」
「おはよ」
博斗は燕の頭をぽんぽんと叩いた。
「さ、行こうか。遅れるとみんなうるさいぞ」
「え? もうそんな時間なの?」
燕は、左腕にはめた智恵たんC-ショックを、これ見よがしに突き出して眺めた。
「あうーーっ! はくと、いそごーっ!」
今度は燕が博斗の腕をひいて走り出した。
「わわっ、ちょっと待った、そんな引っ張ると…」
博斗は、つるっと足を滑らせ、見事に地面に転がった。
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