12
博斗は歩きながら、考えを整理していた。
探知器が壊れている可能性は低い。ということは、司令室で一回目に鳴ったときも、二回目に鳴らなかったときも、どちらも正常に動作していたということになる。
だが、司令室にムーが侵入した痕跡はもちろんない。とすると、爆弾は、誰かが持ちこんだということになる。持ちこまれた時計というと…。
そこで博斗は、重大な見落としがあったことにようやく気づいた。
時計はなにも据え置きのものばかりじゃない。
みんな腕時計をしていた! もし腕時計に爆弾が仕掛けられているとしたら…。
タイムーが正体をあらわしたとき、ぺたぺたと燕のC-ショックに触っていた!
あのとき、燕のC-ショックに十三個目の爆弾をしかけたに違いない!
だから、燕がいた一回目の探知のときは反応して、燕がトイレにいった二回目のときは反応しなかったのだ。
博斗は自分のうかつさを呪った。
燕は、自分の時計に爆弾が仕掛けられたことに気づいたのだ。それが、燕のおかしな挙動の原因だ。
おそらく燕は、トイレになどいない。どこか、別の、ひとけのないところにいるに違いない。
ひとけのないところ…博斗は辺りを見回した。
その視界の片隅に、鮮やかな色が飛び込んできた。
二号館の屋上から、レッド達が吊り下げられている。
おそらく、タイムーが十三個目の爆弾の在処を告げて、スクールファイブを脅迫したのだ。
事態はのっぴきならないところに来ている。
燕がいそうなところで、人があまりいなさそうなところ…。
博斗はピンときた。
探知器のスイッチが入ってることを確認して、博斗は駆けた。
案の定、燕は、暗い体育倉庫の隅で縮こまっていた。
「やっぱり、ここだったのか」
博斗は、ピーピーとやかましい探知器のスイッチを切ると、燕に手を伸ばした。
「おいで、燕君。爆弾を処理しよう」
「やだ! つばめにさわらないで、ちかづかないで! はくとも、死んじゃうよ!」
「大丈夫。まだ時間は止まったままだ。さあ、早くその腕時計を壊しちゃおう」
「や!」
燕は腕を隠すように、膝の間に抱え込んだ。
「おいおい。こんなときにまで駄々こねないでくれよ。…だいたい、なんで黙ってたんだい? もっと早く教えてくれりゃあよかったのに」
「だって、だって…」
燕は声を震わせた。
「つばめ、やなの! 智恵たんがだいじなの! だからだから…ごめんなさいっ!」
燕は博斗の手を振り解くと、倉庫を飛び出した。
「あ、おいっ!」
博斗は慌ててその後を追った。
だが、燕の足にかなうわけがなく、ぐんぐんと引き離されていく。
燕は、博斗から逃げるように校舎に向けて走った。
「燕君! 上を見てみろ!」
燕は、涙をぬぐって、顔を上げた。吊り下げられた四人の姿が目に入った。
「あ…」
「君のために、みんながピンチなんだぞ!」
「なんで…? どうして…?」
燕は足を止めて、突っ立った。
博斗は、急ぎ足で燕に追いつくと、肩に手を置いた。
「燕君が爆弾を抱えていることをみんな知ってるんだ。だから、手出しできなかったんだよ。みんな、誰かを犠牲にして怪人を倒したいなんて思ってない。…人の命は、勝つことより重いんだ」
「…えぐっ。はくとおぉぉぉ。うっ…うっ」
燕は、左腕を博斗に差し出した。目はきつくつぶっている。
博斗は、燕の左腕をとった。振動式分子破壊光線砲を構える。
「いいか、一ミリでも動くと、燕君の腕がバラバラになるからな。動くんじゃないぞ」
「うん」
博斗は、注意深く照準を合わせた。
「スイッチ、オン!」
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