6
歯車は、去年の三月に狂い始めた。
絶対の自信をもって望んだ会長選挙。
まさか落選するとは夢にも思っていなかった。生涯はじめて受けた屈辱。
会長になったのは、生意気そうな顔をした小娘。がさつで、声が大きくて、単純で、なぜこんな女がと思った。だが、なにか遥には、翠の心を揺さ振るものがあった。
それから、スクールファイブの戦いが始まり…博斗先生との出会いがあり…わたくしは、だんだん…。
翠ははっとした。生徒会は、スクールファイブは、心を落ち着かせてくれる。それが、翠には怖かった。
翠は上に立つものでなければならない。そのへんの人間達と心を和ませるようになっては、自分のこれまで築き上げてきたアイデンティティを、否定してしまうことになる。
わたくしは、特別でなければならない。みんなのなかに埋もれてはいけない。
でも、そんなこと、誰が決めたの?
わたくしは、ほんとうに特別でいたいの?
ドアをノックする音がした。
暁だ。
「翠様が、山口を呼ばずに帰られたときは、なにかお悩みがあるとき。お食事を、廊下においておきますので、気が向いたらお召しください」かすかに、暁が去っていく物音がした。
翠は、シーツをかぶり、涙をこぼした。
暁の優しさが、つらい。
そして、いつのまにか眠っていた。
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