12
かくして体育祭は、二時間遅れの閉会式を迎えた。
総合優勝を果たした2-2の代表として壇上に上がっている燕に、トロフィーが渡されているところであった。
「燕にやられたわ」
遥が拍手しながらこぼした。
「まったくですわ。…まあ、陽光祭のときは、わたくし達2-4が必ず優勝をいただきますですけれど」
「あら、それはうちよ」
「ふふ~ん、ですわ」
「瀬谷君」
彼女達を見ていた博斗に、理事長が声をかけた。
「はい?」
「本物のパンドラキーがどこにあるか、知りたくはないかね?」
「いや。知らなければ秘密をバラすこともないですから、俺は知らずにおきます」
「そうか…いや、その通りだ。すまない、瀬谷君。私もね、ときどき恐ろしくなるのだよ。自分が世界の運命を握っていると思うと、ね。こんな重荷からは逃げたしたいと、そう思うこともあるのだが、君達が戦っている姿を見ると、そうも言っていられん」
博斗は理事長をまじまじと見た。
どうもやりにくいタイプだと思っていたが、ほんとうは案外いい人なのかもしれない。
ただ、感情を殺して行動せざるを得ない状況に、自分を追いつめているだけなのではないだろうか。
「なんにせよ…いい体育祭だったな。この数年でいちばんの体育祭だった気がするよ。ありがとう、瀬谷君」
博斗は、理事長の誉め言葉に頬を掻いた。
「いや。みんな、彼女達のパワーと情熱です。…それに、今回はひかりさんの作戦勝ち」
そう謙遜する博斗を見ながら、ひかりは言葉に出せないものを胸にしまった。
ほんとうに、ご自分の魅力に気付いていないのですね。なぜあの子達が必死に戦うのか、なぜ私が貴方に作戦を授けるのか…。
たたずむ三人と、駆け回る五人。
夕陽が、次第にその姿を赤く染めていくのであった。
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