第155話 やり過ぎ注意?

 ん、眩しい…もう朝か、なんか暖かいしもう少し寝ていたいな。ちらっと目を開けて、眩しさにすぐに閉じる。

 視界に先輩が見えた気がしたけど気のせ……


「…?…!?(え?和歌先輩の顔が目の前で!?)」

「ん〜…ふにゃ〜。」

「!!(可愛すぎるでしょう!!)」


 目の前にいた先輩を見つめていると、寝言を言っていたし可愛いすぎるんですけど。

 このままでは色々と理性が持ちそうにありません。ちょっと落ち着くために…俺は寝返りをして反対側を向く。


「ん、すぅ…。」

「…?(あれ、きりんさん?)」


 幼く見えるけどまつ毛も長いし、寝ている姿はどこか先輩に似ているような…可愛い。……なんかおかしい思考が働くぞ。

 とりあえず仰向けに体制を直す。


「ん〜だめぇ〜…」

「!!」


 左側から先輩が俺にしがみついて来た。何がダメなんでしょうか!むしろ良い!じゃなくてだ!!


「ん〜こっちぃ〜」

「!!」


 右側からきりんさんが服を少し掴む。こっちとはどっちでしょうか!あ〜えっと、どうせれば良いの?


「リア充って見ててこんなにも腹が立つものなのね。」

「まぁまぁ、面白いからこのままでもいいんじゃない?」

「2人共起きてるんなら、この状況をなんとかして欲しいんだけど。」


 ジト目の坂俣さんは今にも俺の事を踏みそうな勢いだ。奏人さんがそれを止めつつ、この状況を少し楽しんでいるように見える。


「まぁ自然に起きるまでいいじゃないですか。朝食でも準備してますのでごゆっくり。」

「起きた時の2人の反応も楽しみね。あんたはじっとしてるのよ?」

「…むぅ。」


 それから朝食の準備が終わったくらいに動きがあった。


「ご飯……翔くん…はよ。」

「あ、はい。おはようございます。」

「ん〜〜!よく眠れた。」


 先輩はいつも通り軽い感じで起きて坂俣さん達のとこに行ってしまった。

 なんだかなーって感じがするけど。…きりんさんを起きたか確認する。

 そこには目を大きく開けたきりんさんがいた。


「きっ……」

「き?」

「きゃぁぁぁぁ!!!!」


 おぅ…耳がいたい。

 その後きりんさんに謝ってもらったけど、俺から近づいていないからね。

 俺のモテ期も終わり地下への探索を開始した。


 暗くて足元が見えないので慎重に。階段が終わりたどり着いた先は広い気がする広場。


「声が響くよ〜よ〜よ〜。」

「和歌、耳元で叫ばないで。…真っ暗で何も見えないわね。」

「階段降りた何処かに電気のスイッチあってもいいと思うんだけど。」


 階段から差し込むわずかな光で何かないか探してみる。こういうのは階段近くにあるはずだと言いつつ壁を探る先輩。


 木を燃やすしかないか、そうなると松明か…あれどうやって作るんだ?

 懐中電灯やライターが生まれた時代からあったから、サバイバル要素は何もわからない。スマホのライトも無いし…


―カチッ


 音とともに壁の一部分が明るくなった。


「何か押しちゃった。でもあまり明るくならないね。」

「和歌、ドキッとするから聞いてから押して欲しいんだけど?」

「今度からそーする。」


 先輩が何かスイッチを見つけて押したらしい。一部だけ明かりがついて、何でも押しちゃう先輩を坂俣さんに見張ってもらう。

 俺と奏人さんときりんさんでそこに近づく。


「こ、これは。な、何かの機械?」

「奏人さん、これってブレーカーですかね?」

「僕にもそう見えるけど。上げてみます?」

「そうですね…でも上げなきゃ始まりませんし上げますか。」


―ガコン……。


 何か動いた音がしたけど、何も起きない?


 …再起動を確認…魔力が一定以下の為、魔力供給が必要です。


「な、何か喋り出しましたけど、魔力供給ってどこでするんだ?」


 …検索します……現在展望フロア、灯台システムより供給が可能です。


「あ、ご丁寧に有難うございます。上のあの機械の事ですよね。」

「みたいですね。誰が行きま「行ってくるよ!!」」

「…心配だから私も行ってくるわ。」

「和歌先輩の行動力流石っすね。すいませんが坂俣さんお願いします。」


 さっき何かをする時は聞いてと坂俣さんが言っていたのに即行動って。

 まぁ罠的な何かがありそうではないけど、もう少し慎重になって欲しいなぁ。


 …魔力供給を確認しまし…!!…そ、そんな勢いって!あ、ちょっとまっ!!


「何かやばくないですか?」

「天がいるし、止めてくれるでしょう。」

「あ、あの。こ、この声届きますかね?」

「「……。」」


 …だ、だめ〜、こ、これ以上はぁ〜


「奏人さんはきりんさんとここに!」

「は、はい。」


 俺は全力で階段を駆け上がる。


「ちょ、和歌先輩ストップ!ストップ!」

「ん〜軽く触ってただけど。もういいの?」

「これどういう仕組みかしらね?私が見てても何も変化が無かったけど。」

「それは分かりませんが、下の声がダメって言ってました。」

「あのシステムみたいなの普通に喋るの?」

「まぁもういいなら下行こ。お喋り出来るなら色々聞けると思うし〜」


 先輩はそう言うと下に降りて行った。魔力供給って魔力吸われてるんじゃ…変わらず元気だけど大丈夫なのか?

 3人で下に行くと、暗かった地下も今は明るくなっている。


『はぁ…はぁ…どんな出鱈目な魔力してるのよ…。』

「てへ。」

『そんな態度とってもだめなんだから!私・は繊細なんだから優しく扱って貰わないと。』

「ん、気をつけるよ〜」

『本当かしら…。』

「うんうん。大丈夫だよ〜。」

『……ん!…システム再起動を確認。残存魔力120%…予備システムに蓄積。』


 普通の女の子が先輩とやり取りをしていたけど、あれは何だったんだ?


「そんな畏まった喋りじゃ疲れるでしょ?普通に喋ろうよ。」

『…いや、こっちにも建前って言うか設定がある訳で…。』

「別に今更な気がしますが。さっき色々叫んでましたし。」

『はい、そこのお兄さん。身もふたもない事言わない……身は無いんだけどね。』

「そうですか。それは失礼しました。」

『分かればいいのよ。』


 先輩が普通に喋りかけるのに対応する謎の女の子。

 奏人さんが始めに叫んでいた事を突っ込んでたけど、それに対しても普通に対応する。

 なんか抜けてる気がする女の子だが、身は無いって機械のシステムとかで喋るのだろうか?


『何かもうどーでも良くなってきたわ。』

「あ、諦めた。」

『マスターに言われてたけど、ここに居ないしもういいわ。』

「マスター?」

『私を作った人よ。で、あなた達はマスターの知り合い?』


 色々と諦めた女の子が普通に喋りかけてきた。

 とにかく分からない事は聞いてみればいいかと、俺は前向きに捉える事にした。

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