第150話 目指す方向は同じ。

「ごーるっと。やっぱり丁度いい距離だね。」

「確かに達成感はあるな。」

「「……、……。」」

「無理に喋らなくて大丈夫ですよ。あ、2人共ストレッチもちゃんとして下さいね。」


 走り終えた、ようやくゴール。2時間半くらいかな。始めてのフルマラソンでこれなら速いんじゃないかな?

 走り終えた後は念入りにストレッチをする。整理運動とかちゃんとやらないと翌日に影響が出るからな。


「翔くん、この後何かするの?」

「あ、はい。一度今後について話し合いをと思ってます。」

「ミィーティングだね、了解〜。」

「きりんさんもそれで良いですか?」

「は、はいです。あ、あのシャワーを…あ、浴びても?」

「それは問題ないですよ。」

「「……。」」


 ストレッチしながら次の事を話し合う。坂俣さんと奏人さんはまだ少し辛そうだな…お、ちょうど良さそうなのが見えるな。




「はい、どうぞ。これ飲んでください。」

「「…!(ゴクゴクゴク)」」

「そんな慌てなくても、和歌先輩ときりんさんもどうぞ。」

「ありがと〜走った後は喉渇くよね。」

「あ、ありがとうございます。」

「ふは!マジで死ぬ手前だったわ。ゴホ」

「そんな慌てないの天。」


 俺が目にしたのは飲み物の露店だ。こんな早い時間からなんであるんだ?って思ってたけど、朝早くから仕事をする人もいて結構繁盛している。

 貰ってすぐに飲み干す坂俣さん、それを横目に少しずつ奏人さん。先輩ときりんさんにも渡す。喋らない2人も少しずつ回復し始めた。


「始めはこんな速さで?なんて考えが甘かったわ。」

「だね〜まさかペースずっと変わらずだもんね。」

「途中のアドバイスとか、前の2人の風除けとか色々あって走れたけどね。」

「だね〜走れた自分を褒めてあげたいよ。」

「2人共お疲れ様です。始めて走ったのに歩かず完走は凄い事ですよ。」

「そうなの?ん〜あんたもそうだけど、けろっとしてる3人見るとどうにもそう思えないんですけど?」

「比べる基準が3人だから。普通に合わせればいいんだよ。」

「普通って?」


 そして奏人さんが思う普通の基準とはで話始めた。


「まず始めにおおよそ時速20キロを2時間くらい続ける事。そう!走っている距離は40kmと仮定しましょう。

 約40kmってフルマラソンとほぼ変わりません。」

「あー言われてみればそうね。私は向こうでも走った事は無いけど。」

「ま、僕も有りませんよ。そこで走り終えた時間なんですが、2時間と半くらいです。」

「それが?」

「世界記録が確か2時間と何分かなんだよ。」

「へぇ〜でも世界より30分も違うのね。」

「かなりトレーニングした人で3〜4時間のはず。むしろ素人じゃ感想も出来ないよ。」

「あれ?私達って物凄い事やってのけたの?」

「うん。魔力使って補助と言うか、チートかもしれないないけどね。」

「成る程ね…と言うか奏人って詳しいのね。」

「前に部活で走ろうかで調べた事があるだけだよ。それ調べて小さなマラソン大会に変更したけどね。」


 奏人さんの解説にへぇ〜と聞いてるだけな俺と先輩ときりんさん。こっちの世界に来てから走り込みは結構やってたし、トレーニングしてた人の3時間切ってるのは魔力込みにすれば納得してしまう。

 それに着いて来た2人はかなりの逸材なんだろう。



 そんなこんなで借りた家に戻って今後の話し合いを始める。シャワーとか浴びて、時間が余った男性陣が軽食を用意もしておいた。


「奏人さんとも少し話したんですが、この町は早めに出発した方がいいのでは?って考えてまして。そこで皆んなの意見も欲しいなって思いまして。」

「いいんじゃない?ここって結構過ごしやすいから、慣れすぎると出発しずらくなるし。」

「私もそれでいいよ〜知らない所も早く行ってみたいし。」

「わ、私もそれで。か、翔さんに着いて行きます。」


 俺の話に反対意見が一つもないのはいい事なのか?過ごしやすい環境に慣れ過ぎても良くないと同じ考え方をする坂俣さん。

 先を急ぎたくて若干そわそわする先輩。何かあれば意見をくれるきりんさんも、問題なく着いてきてくれる。


「すんなり意見が通った…まぁいいんですが。」

「方向性が一緒っていいことだよ、うん。」

「和歌の言う通りよ。さっ次の行き先バシッと決めなさいよ。」

「宜しく頼むよ、翔さん。」

「い、行きましょう。」


 目指す方向はあっさり決まりそうだ。とりあえず明日の朝から出発。今日は明日の準備と町長に挨拶して、ゆっくり休むとしましょう。

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