第107話 お預けで八つ当たり?

ーパーン。

ーズパァァン!!

ースパ。

ースパ。

ーピン。

ーピン。

ーパン。

ーズパァァン!!


 館内に打ち合う音が響く。ポイントは今、トゥエンティー・ラブ。


 俺と先輩は防御を重視してこの状況を続ける事にした。それからかなりの時間が過ぎた気がする。


「はぁはぁ…うりゃ!!」


ーズパァァン!!

ーパン。


「はぁ、よいしょぉ!」


ースパン!

ースパ。

ースパ。


 返ってくるものを確実に相手のコートに返す。前後への揺さぶりは無いが、左右の動きは取り入れてきている。変わらず強気に攻めてはいたが、そろそろ体力も限界に近い様だ。


「はぁはぁ、ぐ!」


ースパン!

ーパン。


「ん!」


ースパ。

ーパン。

ースパン!

ーパシュ!


「っ!うらぁ!」


ーパン。


 上がったロブに対して、俺は後ろの先輩に合図を出す。


ーズパァン!


「「てやぁぁ!」」


ーカツ。がさ。


「マッチウォンバイ、翔・和歌ペア。2ー0」

「はぁはぁ…ふぅ。ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

「ふにゅぅ。あ、ありがとうございましたぁ〜。」

「うん!ありがとうございました!」


 お互いに握手をする。


「お互いに課題はあるだろうが、今は少し休憩にしよう。」

「ん〜楽しかったね!翔くん。」

「そうですね。和歌先輩とダブルスは久し振りでしたが、体が覚えているものですね。」

「あれだけの試合後だというのに和歌は元気だな。」

「あ、きりんちゃん。ふふ。私はいつでも元気だよ。」


 試合後でも元気いっぱいな先輩。俺は少し疲れた、主に精神面で。


「翔も余裕がみえるな。頑張っていたし魔力総量も増えたんじゃないか?」

「そうですかね?ダブルスですし、節約してたとこもありますが。」

「翔の試合はシングルスの予定だが。まぁ今の翔なら問題なさそうだな。」


 ストレートとはいえ2ゲームを終えても魔力切れの気怠さは無い。走り込みや特訓の成果が出ているのかな?魔力の総量調べられたら手っ取り早いんだけど。前にルカさんに確認したら、数値化はできないって言われたし。


「この試合での流れを忘れない様に気をつけて挑みます。」

「うむ。翔なら心配いらないな、頼んだぞ。」

「はい!」

「翔くん固いよ〜。もっと肩の力抜こうよ。」

「了解です。程々に頑張ります。」

「うんうん。あ〜早く明日にならないかな〜。試合したい!」

「ん?明日相手が来るが試合は明後日だぞ?」

「え!?」


 相手もこちらに着いてすぐ試合は厳しいだろうし、まぁすぐ試合は無いのかなって思ってはいたけど。先輩はすぐ出来ると思っていて、直前にお預け状態に落ち込んでいる。


「な、なので和歌と翔には、ローとリコにダブルスの何たるかを教えて欲しいのだが…。」

「ふふふ。しょうがない。2人には八つ当たり…厳しく教えちゃおう!」

「今八つ当た…いえ、何でも無いです!俺も付き合います!!」


 試合後も元気な先輩はやる気満々。八つ当たりの部分をツッコミたかったが、先輩の顔がとてもにこやかで俺はただ従う事にした。


「と言うわけで2人共、特訓はこれからだよ。」

「「え?少し休憩は?」」

「大丈夫!明日は試合も無いし休む時間はあるから。」

「でもな。試合後のクールダウンを…。」

「そう?じゃ、外で走って…」

「よし!すぐ始めようぜ!さっきの試合の感覚があるうちにすぐにだ!ご教授お願いします!」

「り、リコもまだ打てるよぉー!和歌先生お願いします!」

「走っても良かったんだけど、さっきの試合の感覚あるうちにっってのも大切だね。」

「「うんうん!」」

「よし。翔くん!何から始めればいい?」

「あ、そこは俺が考えるんですね。」


 妙に仕切るが効率とか練習メニューみたいな細かい作業は考えたりはしない。先輩は前から変わらないなぁ。2人のクールダウンをしたい気持ちも分かるし、ここは弱点や反省点を上げつつ少し話を…。


「翔くん。打ちながらでもお話は出来るよね?私が打つから早く指示を出してね。」


 あはー。心読まれたかなー?


「と言うわけで2人はコートに。ロングサービスはドロップで、ショートはヘアピンで返して下さいね。」

「お、おう。」

「う、うん。」

「あ、因みに当然こちらも打ち返しますんで。ロブはドロップ、ヘアピンにはヘアピンで返して下さいね。」

「「(あれ?翔もスパルタ!?)」」

「2人共いっくよ〜。」


 こうして2人のスパルタ特訓は夕飯まで休み無く続くのであった。

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