第30話 夢で良かった。
目の前が真っ白になった。
前にもこんな事があったな…なんだっけ?
「っ。ここは…森?あれ?」
目を開けたら俺は森の中に居た。
さっきまでローランドさんと試合していたはずだけど。
「この森覚えがあるな。確か和歌先輩と…」
俺は周りを見回してみて、先輩が居ない事に気が付く。
しばらく待ってみたけど、出てくる気配はない。
「んー。和歌先輩がどこかに行ってるかと思ったけど。そうでも無いみたいだ。」
なぜここに居るのか。それは分からないけど、とりあえず歩いてみる。
始めて来た時はすごく慌ててたけど、いろんな事がありすぎて慌てなくなった。
「このまま歩いてどこに行くんだろうか。熊さんとか…やめよう。」
出てきたら。みたいな事を考えると出てくると思うので思考を途中でやめた。
「…。」
森の中を歩く。
「…暇だな。1人で喋ってる寂しい人みたいだ。」
さらに森の中を歩く。
「さすがに彷徨いすぎだろう!このまま歩いていいのだろうか。」
始めに森に来た時は、先輩と居たから暇とか不安に感じる暇も無かった。
だけど今は1人で森の中。
ずっと同じ景色だし、建物的なものも何も見えない。
「いろいろ振り回されてるけど、和歌先輩が居てくれて良かった。…あれ、もしかしてあれが夢で、1人でいる今が現実なのか?」
夢が何か分からなくなった。確かめる方法はあるんだけど。
もし先輩と居た出来事が夢で、1人で居るのが現実だと思うと確認できないでいた。
「…。」
森の中を歩いて…何かが光った気がして止まった。
そっちに歩いてみると。
目の前が真っ白になった。
「あ、翔くん起きた?」
「…和歌、先輩?」
「ん?和歌先輩ですよー。」
「和歌先輩。夢じゃない?」
「てい!」
いつもなら全力で夢から覚ましてくれるけど、やさしく額を叩かれた。
「いて。夢じゃないか、良かった。」
「夢?何か見ていたの?」
「目の前が真っ白になって、気がついたら森に居たんですよ。」
「始めの森?」
「多分ですが。そこには俺だけで先輩も居なくて、1人で歩いてました。」
俺は森で歩いていたけど、先輩と居た所じゃ無い気がして多分と答えた。
「森で1人で和歌先輩もいなくて。もしかしたら和歌先輩と居た時が夢なんじゃないかとちょっと不安で。」
「…うん。」
「今が夢じゃなくて。和歌先輩が居てくれて良かった。」
「…っ。」
羽の打ち合いする音がする。
俺は少しずつ意識がはっきりしてきた。誰かが試合してるのかな。
目の前には天井がと先輩の顔…。
「あの…和歌先輩。この状況は?」
「こ、これは。ヘレンさんが、頭を少し高い位置にした方がいいって言ったから…。」
俺は和歌先輩の膝の上に横になっている。そう膝枕です。
ヘレンさんの支持らしい。あとでお礼を言っておこう。
「翔くん、ローランドさんの試合中に魔力切れで倒れたんだよ。」
「あぁ、スマッシュ打ち返した記憶があったような。集中しすぎてよく憶えてないや。」
「ホント気をつけてよ。きりんちゃんが言ってたけど、倒れるってあまり無いみたいだよ。」
「そうなんですか?確かに前打ち合いしてた時はラケットに魔力遅れなくてガットがなくなったな。」
「それと、翔くん。」
「はい?」
「もう大丈夫かな?立てそう?」
「…はい。ありがとうございました。」
至福の時は終わった。ここで粘ったら変に思われるだろうし素直に起きるか。
魔力も少しは戻ったかな。全快ではない気がするけど、起きるくらいは問題ない。
「そう言えば、試合はどうなりました?」
「翔くんが倒れちゃって、私とルカさんの試合を後回しに、今はヘレンさんとリコちゃんが試合してるよ。」
「あ、なんかすいません。試合後回しになっちゃって。」
「あーそれは大丈夫だよ。見てるだけでも参考になるからねー。」
俺は試合している2人をみる。
「ヘレンさんとリコさんか。結構競ってる感じですか?」
「ファーストゲームは21-15でヘレンさんが取ってるよ。今は…」
「サービスオーバー、フィフティーン・イレブン」
「ってとこ。」
「まだまだこれからですね。」
あのヘレンさんがどんな試合をするんだろう。
俺は先輩と試合の行方を見守る。
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