キツネとカミサマ

RONME

Chapter 000

0-00 プロローグ




 どこまでも青い海に、船が飛行機雲のような波を立てていた。少し遠くに目を向ければ、虹色の輝きに頭を彩られた山が見える。

 そんな船で、少年が一人空を仰いでいた。


「……」


 黒い髪の少し眠たげな彼は、火山の方をチラリと見て、港にある人影に目を向けた後、すぐ空に視線を戻した。その目は、何かを思案しているようだった。





 一方ジャパリパークでは、巨大黒セルリアンとの戦いを終えてから二週間ほどが経っていた。


 暇だったのか、近くに来ていたかばんとサーバルは港まで散歩をしていた。


 すると、サーバルが海の向こうを指さしてかばんに声を掛けた。



「あ、あれ見てかばんちゃん!」


「え、 どこ?」


「あそこだよ! 海の上!」



 水平線に、船が見えた。よく見るとそれはこちら側に向かっているようだ。もしかしてヒトがやってきたのか、という期待がかばんの心を躍らせたころ、腕につけたラッキービーストが警告を発した。



「注意、注意、海の方向にセルリアンが観測されました」


「海にセルリアン…? 」



 頭の上にハテナを浮かべ、かばんは船の方向を見ていた。


 海の中に蠢くモノに、そしてこれから起こることに気づくことはなく、ただただ平穏ないつも通りの海に見えていたことだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る