桜坂栞の日記

リーキ

X102年春 初めに


日記を書くのは学生の宿題以来だ。


どうして日記を書こうと思ったのか。それは今日から私の生活が大きく変わるからである。私は最愛の人と結婚し共に暮らしていく。きっと、これから先幸せに満ちた生活を送るだろう。確信している。

しかし、時には喧嘩をしたり気持ちがすれ違うこともあるだろう。そんな時に自分を、そしてあの人を見失わない様にするため、この日記を書く。


日記を書くにあたってルールをいくつか決めた。

①日記に仕事の内容や愚痴を書かないこと

②日記に毎日の献立をメモすること

③毎日書くのが望ましいが無理はしない。

④もしもの時のために日記の最終頁に、メッセージを書いておくこと


④のルールを作ったのは、今私たちが暮らしている世界は非常に不安定だから。もしかしたら明日死んでしまうかもしれないから。

そうだ。

この日記が100年、1000年と残って、未来の人々に発見されるかもしれない。そうしたら、私のささやかなこの日記も歴史的な書物になるかも。それならば、私が分かる限りでこの世界のことも書いておこう。


この世界は大きな1つの大陸、そこを囲むように海が広がっている。

大陸は、いくつもの国に分かれていたが様々な戦争を繰り返しここ100年は大陸統一国家つまり一つの国になることで落ち着いている。

生まれたときから戦争を経験していない私たちだが、常にあるものと戦い続けている。

それは多分、未来の人たちも戦っているのだろう。

それは影物(カゲモノ)という生物だ。我々、人類は陽の力を持っている。術式と呼ばれる回路図を作成し陽の力を注ぐと明かりを灯したり、重い物を運べたりする。その力は農業・医療・工業など様々な用途に使われている。それと対する影の力、その力を持っているのが影物。影物は人類や生物と同じような姿かたちをしているが全身が黒く目や口などの器官もない。彼らは、我々人間に攻撃を行い、我々の生命力を奪いつくそうとする。いろいろな研究がされているが、彼らがなぜ存在するのかははっきりと分かってはいない。あくまで、個人的な意見だが我々陽の力を持つ人類がいる限り、影物をは存在し続けるのだろう。

ああ、つい仕事の報告書のような書き方をしてしまった。せっかくルールを作ったというのに。今後は気を付けよう。

話を戻そう。今までは影物は理性のない動物のような動きをするものがほとんどだった。しかし、近年知性を持ち、群れというより軍隊のような組織を持ち始めた。そうして私たちの生活はかつてないほどの恐怖に脅かされている。

それでも、私は怖くはない。

だけどもし私に何かあった時にあの人に伝えたいことは沢山ある。だから最後の頁にはあの人へのメッセージを書こう。


長くなってしまったが、前置きはおしまいにしよう。

飽き性な私だが、できる限り日記を続けることをここに誓う。

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