第23話 夏の終わり

『夏の終わり』


足元には細い道

爪先で探るも心許ない

揺るがぬ体躯などないから

転落も辞さない覚悟


振り返ると長い道

セピア色した数々の記憶

仄かなアカシアの匂いと

決別して迎えたこの季節


終わらない夏


誰もがそう言って微笑んだ

僕は赦しを乞うて回った

時は人を変えると信じて

そんな一時の感情なんて

信じるほうが間違いさ

夕陽は落ちるよ


昨日打ちのめされた彼だって

今日は随分滅入った彼だって

夜は優しく包み込むから

道はいつか開けると信じた


君の空は高く、青く

否、灰色に沈着してしまって

いったい誰が残るのか

この夏に耽溺する蜻蛉


もう、夏も終わりさ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る