昇格

ハイスピードで警視庁の地下駐車場に突っ込む車があった。


「 きゅうううーーーーーーーー 」

 タイヤが悲鳴をあげながら、犯罪者が乗る車は地下へと降りて行った。

 この音で中沢が起きた。


「 た……竹下さん……無免許なのになんで……ドリフトまでするんですか……

 残機ないですからね……僕たち…… 」

「 大丈夫です。ほら、見ての通り、あなたは今生きているじゃありませんか。

 そして私は無免許ながらぴったりと目的地に駐車場することに成功したのです 」

 なんと綺麗に二本の白線の間に収まっている。


 竹下は急ぎ車を降りたので、中沢もそれに続いた。

「 竹下さん、ゴールド免許でもとったら保険も安くなりますし、更新も楽になりますし、なにせ竹下さんならできる気がします 」


「まずグリーンを取ることが面倒です。更新が面倒です。その他いろいろ面倒です。車も持ってませんし、車検だって。

 しかもさっきまで君、私の運転にああだこうだ文句ばっかりつけていたのはなんだったのでしょうか。」

 中沢は耳を塞ぎつつ走る。

 余計なことを言った。


 受付を「 緊急事態ですのですみません 」といいパスし、エレベーターが停止しているため階段を物凄い速さで駆け上り、一課についた。


「 おう、竹下、中沢、久しぶりだな 」

 長沢が話しかけてきた。


「 総監が殺害されたと聞き、急ぎ馳せ参じてまいりましたー 」

 中沢はふざけて言った。

 中沢と長沢、二人して筆者のミスで名前が似てしまった上に、なぜか二人ともお気楽である。

「 まさか中沢くん、これを機に出世しようなどと考えているのではないですか? 」

 彼は答えなかった。


「 そうそう長沢さん、馬場さんは? 」

「 岩瀬総監、ああ、元の高松総監が亡くなってから1時間も経たずに副総監だった岩瀬の野郎が総監になったんです。副総監には参事官だった茶屋四郎が繰り上がり。全部片野長官のご意向だとか 」

 中沢がへえ、といった。


「 それさ、馬場、あいつ俺を置いて参事官になっちゃたんですよ。こんな酷いことありますか普通…… 」

 中沢が長沢をに慰めた。

 参事官のポストは一つなのだから当然である。


「 で、結局馬場さん、参事官はどこに? 」

「 一人で総監の現場検証に行っちゃいました………… 」

「そうですか。ありがとうございます。

 中沢くん、彼のこと慰めといてください 」


「 ……えっ、俺?というかどこ行くんですか! 」

「 現場検証。他に何かありましょうか? 」

「 いや、絶ッッ対ダメです!超絶お取り込み中ですよ、絶対ーー! 」


 御構い無しに彼は一課を出て行った。

 胸のポケットから白い手袋をだし、慣れたようにつけた。


「 竹下さんーーー! 」

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