水戸

「 折角なら観光でもしたかったのですがねぇ…… 」

「 すればいいじゃないですか。別に私たち、水戸へ来るように命令されたわけじゃありませんし 」

「 まあ事件の方が面白い……かも………… 」


 彼らはいま、森氏の自宅のある水戸にいる。

 霞が関から水戸へは地下鉄丸ノ内線で東京へ、乗り換えてひたち5号にのってきた。


「 冬ですから針葉樹しかありませんね。当然ですが 」

「 これもまた、いいですね 」


 更に通りすがった偕楽園を外から覗く。

 あまり意味があるようには思えない。


「 では、本題に参りましょう 」

 つかつかと二人は歩き出した。



「 失礼致します。ここの大家さんでいらっしゃいますか 」

 小さなアパートに着いた。

 早速二人は大家を訪ねた。


「 いかにも。あなた方は……? 」

 きょとんとしている。

 多分まだ捜査が入っていないのだろう。


「 警視庁捜査一課の竹下です 」

「 同じく中沢 」

「 ひ、ひえっ、け、警視庁? 」

 大家の老人はたいそう腰を抜かした。


「 こちらにお住まいであった森さんという方の捜査を行ってまして。事件に巻き込まれたようで 」

 そう言うと大家ははいはい、と言って鍵を取りに行った。


「 竹下さん、早くしないと馬場さんたち、きちゃいますよね 」

「 今更焦っても 」

「 まあ、そうですけど。で、卒アルを探すんですよね 」

「 まあ、学生時代がわかるものであればいいのではないかと思います 」


 大家が戻ってきた。

 さっきとは違って落ち着いている。

 警察ってんのは脅すのが得意だなぁ、と彼は呟いた。


 アパートは綺麗に塗られている。

 最近塗り直したらしい。


「 こちらへ。終わったら教えてください 」

 森氏の部屋の扉をがちゃんと開けた。

 すこし、埃がたった。

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