第21話「人柱(じんちゅう)」
第二十一話「
ザシュッ!
闇に
「ぐぅぅ!」
堪らず飛び退いた二メートルはあろう巨漢が忌忌しげに唸り声を絞り出していた。
「まったく、運が良いのか悪いのか……この状況を発見したのがキミとはね……」
薄暗い旧校舎の教室の一室……一般生徒の生活圏とは無縁の立ち入り禁止区域。
「……先輩……貴方にとっては悪いんじゃ無いですか?」
「……それはどうかな?どちらかというと……」
ガガッ!
「っ!」
ガキィ!
「くっはっ!」
再び闇の中から襲いかかる巨漢の右拳を木刀の一撃で防いだ少女であったが、その勢いのまま押し込まれて廊下の壁に背中を打ちつけていた。
「失踪事件を追ってこの現場を押さえたのは勘が良かった……でも”
木刀を構える少女の後ろには、巨漢に倒されたのか、それともこの少年に倒されたのか……十人近くの木刀を持った男子生徒が横たわっていた。
「油断……相手をただの暴漢や異常犯罪者と思い込んでいた……そして、自身が
「…………」
「勘は良かったが準備が悪い……ふん……つまり総じて運が悪かったと言えるか……」
暫く、目の前の
「……いいえ、運が良かったわ……」
「?」
「こんな事をしでかす恥知らずが身内に居たなんて…………身内の不始末を内々に裁けるのは運が良かったのよ」
そうして彼女は壁際から背を離し、木刀を垂直に立てて右手側に寄せると、更に左足を前に半歩踏み出して構える。
「裁く?誰を?誰が?……できるのか
確かに戦況は不利……
彼女が引き連れてきた者たちは全てうち倒され前後不覚。
対峙する相手は、彼女と同じ
そして、最大の問題は、彼女が
「二人?
ーージリッ
そう言いながらも彼女はジリジリと
「それでも二対一という現実は変わらないが?」
「ですから一人はただの操り人形状態でしょ……それに剣道三倍段って言葉、識っているかしら
軽口を放ちながらも更に間を詰める、
彼女の構えは実戦剣術の基本、五行の構えのうち”
近代剣道ではあまり使われることの無い、多対個でも対応できる超実戦系の型だ。
「ふん……だからだよ、正気じゃ無いから怖いんだ……そこの
なにか薬のような物か、それとも催眠術の
彼女には解らないが、
「それに僕は、”
「最強?……
だが、
この危機的状況でも、気の強い彼女らしい一撃と言える。
ーー!
だが、結果的にはそれが不味かった……
途端にその場の空気が重苦しいものに一変したのだ!
「………………やれ」
「う゛!う゛ぉぉぉーー!」
ーーっ!
ビリビリと室内の大気が振動するような雄叫び!
ドカァァーー!
柔道家とは思えない打撃技を繰り出して木製の椅子を粉々に破壊する巨獣!
「くっ!」
辛うじてソレを躱した
「うぉぉーーー!」
「凄んでも無駄よ!ここはもう剣の領域だから!」
そして構えた木刀を目にもとまらぬ速さで突き出した!
ドスゥゥ!
「がっがはっ!」
結果、
「…………う……う……おぉぉぉぉぉーー!」
ーーいかない!
突如その状態から体制を留め、グローブのような両手のひらを万歳したように天に掲げた。
「っ!あの突きを受けて反撃が出来るというのっ!」
眼前で自身を捕まえようとする常識外れの巨漢に対し、再び木刀を構える黒髪の少女。
ーーがぁぁぁぁーーー!!
ーーくっ!
ーー
ー
「そこまでだっ!」
「っ!」
「ぐっ!ぐふぅぅ」
割って入った声に、巨漢と少女の動きが停止していた。
「…………」
「たいしたものだね……
そこには、先ほどまでとは打って変わって、どこか愉しそうに尋ねる
「………………試合では……負けたことが無いわ」
木刀を握ったまま巨漢に対峙し、視線だけを
「ふふん……試合では……ね……なるほど……」
相変わらず
「で、どうする?試合では弟より腕が立つ
無邪気とさえ見える
「…………やっぱり、ただの暴漢や異常犯罪者だわ」
悔しげに、そう吐き捨てた流れる様な長い黒髪の少女は、木刀を床に落とした。
ーーカランッ!
乾いた音をたてて彼女の頼みの綱は床の上に転がる。
「素直で何より……余り手間をかけたくないんだよ、今はね……」
彼はいつの間にかその場所に移動し、生徒の首に足を乗せて、いつでもへし折れるとアピールしていたのだ。
「…………」
無論、その男子生徒は、
「…………卑怯な……
「いわいえっ!」
ガバァァァーーー!
「っ!」
ぐいっ!
「なっ!」
ーーグローブのような無骨な両手のひらを、
「動くなよっ
「く……」
嫌悪と恥辱に顔を引きつらせ、耐える長い黒髪の少女。
すぐさま、ゴリラのような男の芋虫を連想させる太い指が、彼女の小さめの膨らみを遠慮無く制服の上から握りつぶした。
「くっ……う……は……」
痛みと恥辱で頬を染め、整った顔をゆがめる少女。
「良い顔するじゃないか……
「こ……このっ!」
殺気の籠もった視線で
「キミは言ったよね……
「……う……はぁ……ぁぁ……」
強力無比な握力でギリギリと胸を鷲掴みされ、息も絶え絶えな少女は、
「はは……僕が?この僕が脇役?…………ふふ……」
「……み……は……ら…………いと……?」
「あり得ないんだよっっ!この
ーーキィィィーーーーーン
「っ!はぅ!」
「な……なにっ?……ぁ!……なんな……の……あぁ……あぁぁぁっ!」
巨漢に掌握された彼女の双房を起点に、ビクリビクリと白く華奢な少女の身体が何度も跳ねた。
「あぁ!ひゃぅっ!ふぁぁあぁぁぁーーーー」
流れる様な彼女自慢の艶やかな黒髪が何度も振り乱れ、ビクンッビクンッ!と白い四肢が休む間もなく痙攣し続ける。
「……ぁ…………ぅぅ……やめ……ぁ……」
精神的にも殆ど抵抗できなくなった
その彼女の慎ましい胸に対し、
「……く……ふぅ…………ぁ……」
そして”なにか”が新たに流れ込む度に、彼女の自我は曖昧になっていった……
「…………ぁぁ……………………」
ーーやがて
「…………」
完全に重力に身体を預けてしまった彼女は、
「これからだ……これからだよ
そう言って歪に笑った
第二十一話「
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