第2話「落とされた先は森の中の小川だった。」

光に包まれ徐々に視界が戻ると、俺は森の中にいて、其処には本当に小さな小川が流れていた。


服装は安易な白シャツ一枚に動きやすそうなカーゴパンツだった。


ふと足元に違和感を感じ、視線を下へと向けると人一人分程地面から浮いていた。


まさかとは思ったが見事に重力が発生し、落下する。


ドテン!!


「痛ってぇ。っつかここは何処だ?」


辺りを見渡すが何もない。


そして出た言葉は「大自然。」その一言だけだ。


カサッ。不意に目の前に一枚の紙が舞い降りた。


俺は手に取りそれを見る。


「特別に#無限収納__インベントリ__#のスキルだけをお主に授ける。後、食事も幾つか収納しておいた。食べるが良い。by神。」


‥‥。


「って、アホかぁ!!ここは何処なんじゃぁ!!!」


勢いで紙を破き、放り投げてやった。


ったく。どないなっとんじゃ!?


そんな風に腹を立てていると、急にお腹の虫が鳴き始めた。


「あ~。イライラして腹が減ってきた。インベントリかインチキドリか知らんが、スキルとか言われても意味が分からん。」


ふと、意識的にインベントリを想像すると、頭の中に色んな食べ物が現れた。


言葉では説明しずらいが、食べたい物と言うよりも今手に持ってる物?謎だがそんな感じに思えた。


試しにステーキが頭の中で出てきたので、出そうと考えると、目の前に厚さ2センチぐらいある熱々のステーキが黒い鉄板の上に置かれ現れた。


その横にはニンジンとマッシュポテトも添えられている。


ステーキの上に乗せられたガーリックの香ばしい匂いが食欲を掻き立てる。


俺はその流れでまた脳内でインベントリを開き、フォークとナイフを取り出しステーキに齧りついた。


「上手い!!!なんじゃこりゃ!!今まで食ったステーキの中で一番上手い!」


あっという間に俺はステーキを平らげ、満腹状態となると、急に喉が渇きだす。


もう一度インベントリを開くが水は無かった。


その代わりに水袋と名称される物を発見し、取り出すが中は空っぽだった。


「川の水を汲めって事か‥」


俺は迷わず川の水を袋に入れ、水を飲み干した。


水は冷たく、とても美味しかった。


せっかくなので、水袋に再度水を入れる。


「そういえば出す事は出来たが収納はできるのか?」


試しに水袋を持って収納を意識すると、パッと目の前から消えた。


「成る程。なかなか便利だ。」って感心している場合ではない。


ガササ。


不意に茂みから物音が聞こえ、俺の視線はそちらに向く。


「なんだ?猪か?それか熊?」


俺は直ぐにでも逃げれる様に姿勢を低くし様子を伺うと、その物音の正体が姿を現した。


「ギギギ!」


な!!?


俺は驚愕のあまり声が出せなかった。


現れたのは尖り耳で緑色の肌をした生き物だった。


体調は140とそこまで高くはないが、物騒な事に錆びついた剣を持っている。


そして更に此方に向けての敵意を感じる表情が何とも悍ましい。


何だあれ?まさか襲ってくるとかないよな?


いや、襲ってくる。絶対。絶対だ。


「ギギギィィ!!!!!」


案の定、その生き物は剣を振り上げ俺目掛けて突っ込んできた。


物体は剣で俺に突きを繰り出したが、間一髪で俺はそれを避けた。


おいおい!マジか!やる気か!?話が通じそうな感じでも無いよな?そもそもあの剣が本当に斬れるのかは兎も角、当たったら痛い事は間違い無い。死だってあり得るぞ。


さぁどうする!?


殺るか殺られるか?


答えは決まってるでしょ?


殺るっきゃねぇだろ!!



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