11月22日 現代によみがえるライダーバトル〝バーチャル蠱毒〟

 ファイナルベント!

 雪車町地蔵だ。


 何の変哲もない冬を目前としたある日、その情報はもたらされた。


「えー、君たちには、ちょっとVTuberになるため、最後の一人になるまで戦ってもらいます」


 それは、さながらバトルロワイヤル。

 現代によみがえったライダーバトル。

 たった一つの容れ物カラダをめぐり、5×12人が命を削る。


 戦わなければ、生き残れない……!


 完成したVTuberのアバターは5体だった。しかし、その魂──中に入るものは決められていなかった。

 だから開催されるオーデション。

 エントリーするのは、一つの体につき12人!

 最も人気があり、最後に面接をクリアした〝人格〟が、華々しくデビューする。

 ……消滅した11人の魂を背負って。



 ──という、なんか滅茶苦茶エモーショナルな催しが開催されるらしい。

 下手なコロッセオより残酷な見世物じゃないかという意見もあるが、物書きサイドの一員からすると、これだけで一本話が書けるレベルの発想である。


 某所ではすでに大喜利化しており、12人のエントリーした人間は隔離されており敗北すると実際に処分されるだの、敗北したら「まだ消えたくない……!」と叫んで消えるだの、完全に娯楽の最前線と化している。


 一方では倫理観を問う声もあり、勝ち残ったところできえていった者たちのファンがアンチになるだけではないか、誰も得しないのではないかと危惧する声も上がっている。


 泣き落としはNGで、すでにやらかしたものはエントリー抹消とか、まことしやかにうわされているので実際コワい。


 今年もあと一か月というところに来て、こんな特大のイベントが発生するとは思っていなかったので、若干驚いている。

 できればこの戦いを最後まで見届けたい。

 命がけのサバイバルゲームのおしまいは、きっとこんな言葉で結ばれるだろう──




以上がこの物語の真相であり、Vtuberと名乗る人間達の戦いの真実である。

この戦いに正義は、ない。

そこにあるのは純粋な願いだけである。

その是非を問えるモノは――




(実際、あまりに悲しい話ではないのか)

(善良な意見は驚くほど多いですよ。人間捨てたものではないというぐらい、やさしい言葉ばかりです)

(一方でおまえのようなものもいる)

(……悲しいものですね、人間の性って。それでは、アデュー!)

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