第3回愛・戦士たち
7月3日(木)
堂面菊四郎は本来、天国口高校に非常勤で教員をするはずだった。
ただ向こうの返事が遅れていて、今は清掃のアルバイトをしている。力仕事は気が紛れる。
結局ろくに寝れないまま朝になってしまった。隣りではかなちゃんが無邪気に寝息を立ててる。”Foo Fire”のママとも和解したみたいだしよかった。
そっと、かなちゃんの頬に触れてみる。カシミアのように柔らかい。
なんでこんないい子と別れ話になったのだろう……あの時の俺はどうかしてたんだろうか?まあいい、今この至福を噛みしめよう。
CDでも流そうか……今、朝7時半か……菊四郎はショパンの前奏曲を流し、朝飯を作ろうと台所に向かう。
ご飯を炊き、味噌汁にキャベツを入れる。「菊ちゃん?もう起きたの?」かなちゃんが目を覚ました。
「CDで目覚めちゃった?」
「朝ご飯作ってるの?ごめん、ごめん私やるから」かなちゃんは慌てて起きてくる。
「あとは納豆用意するくらいだよ。ご飯もまだ炊けてない」
「わかった納豆出すね」かなちゃんは冷蔵庫を開けて納豆とヨーグルトを取り出す。
朝食を取り、2人でぼけーっとテレビを見てる。
「かなちゃん、今日も店だろ。寝てなよ」
「うーん……昨日から結構寝たからね……そのうち寝るよ。菊ちゃん今日バイト何時から?」
「昼1時から、まだ余裕ある」
「そう、あーだるい。職業病だな」肌はつるつるなのによく言うと菊四郎は微笑む。
天国口高校では午前の授業が終わり、視聴覚委員の慶事紀之と初音君也はリクエストBOXをひっくり返していた。
「”颯爽たるシャア”ってファーストガンダムのBGMだったよな、君也」
「こっちはもっと渋いのがあるぞ、”愛の惑星(プラネット)”ダ・カーポだよ」
「何だよ、それ?」
「紀之は知らんか、80年代のアニメ「地球へ」のエンディングテーマだ」
「ふーん、AKBの”恋するフォーチュンクッキー”と”ラブラドール・レトリバー”が5人づつリクエスト来てる」
「なんか古い曲多いな、イモ欽トリオの”ハイスクール・ララバイ”とか、アン・ルイスの”グッドバイ・マイ・ラブ”とかもんた&ザ・ブラザーズの”ダンシング・オールナイト”……まだ一杯ある。」
「君也、北島の奴遅いな。」
「まあ、あいつは野上に一途だから……」
「君也はうまくいく確率はどのくらいだと思う?」
「0~5%ってとこじゃない?」
「おお、チェッカーズの”哀しくてジェラシー”が来てる。北島に聞かせたいな」
3年A組学級委員野上薫子は伊藤シャドウの陰になってる教師栄華武蔵にまるで媚薬を飲んだかのように惹かれていった。
同じA組の高橋・サファイア・ライト・里見も同様で、一年前の教師本城とはまた別な女性を惹きつける魅力がある。
野上はしばらく本城のことを引きずっていたが、伊藤シャドウに惹かれたのは一瞬だった。
第一ライバルが多すぎる。だが、栄華もいい噂を聞かない。
破天荒な野上はそういうDANGEROUSな所にも魅力を覚えた。実際口数も少ないし、何を考えてるのかわからない所が多く。不思議な存在だ。
野上は栄華の自宅を突き止めようと思ってる。断固アタックだ。
一方陸上部で、3年A組の浅利恵子こちらも本城本命から見事に伊藤シャドウに寝返る。
しかし伊藤シャドウはガードが固く、浅利に太刀打ちできる相手じゃなかった。
放課後3年B組の初音君也はサファイヤが諦めきれず、栄華のことは抜きで駅前のドトールで待ち合わせる。
「何話って?」サファイアはストレートに聞いてくる。
「お前栄華先生と付き合ってるって本当なの?」
サファイアは半笑いで「だったら、どうなの?あなたに関係あるの?」
今の発言で自分を何とも思ってないことがわかった。
「栄華って色んな生徒に手出してるらしいんだよ」
「そんなこと言いたかったの……」サファイアは思いっきり伸びをした
「私が好きでやってるんだからいいの、初音に関係ないじゃん」
初音は涙が出そうになっていた「うん、ならいいんだ」
サファイアは怪訝そうに初音を見る「じゃあ、私帰るね」
「バイバイ」サファイアが一階に降りた所で、初音は少し落涙した。”バカ、泣くな男だろ”自分に言い聞かせていた。
天国口高校教師伊藤シャドウは夕方6時に自分の部屋の前に着き鍵がかかってないことに気付く。
ドアを開けると香ばしい匂いが充満してる。「何だ何が起こった?」シャドウは慌てて部屋に入る。
案の定、我道幸代が料理を作ってる。
「どうやって入った?」
我道は一言「伊藤シャドウ先生と恋愛することにしました」
2014(H26)11/15(土)・2019(R1)11/11(月)
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