第38回Outsider Early Dinner

夜は岸森が作ってくれるというので、牛乳だけ買って家路につく。


数分後、岸森はセーラー服のまま買い物袋を持ってくる。


「材料費出すよ。いくらだった?」


「いいよ、私が勝手に言い出したんだから」


そう言って岸森はまた肩に腕を絡ませてくる。


「お前も好きだねー」


「いいの、いいの」


そう言ってキスしてくる。キス魔だ。


4分くらいしてから、岸森は唇を離し、息をつく。


「お前「息もできない」って映画知ってるか?」


「「息もできない」?ZARDの曲?」


「ああ、やっぱいいや」


岸森は持参のエプロンをして、料理し始める。


今教頭とかに踏み込まれたら俺も懲戒免職だな……ありえん図だもん。


レンタルで借りた邦画「悪の教典」観始める。


30分後くらいに岸森が「出来たよー」と声をかけてくる。


「ああ、ありがとう」


メニューは冷製トマトパスタとポタージュスープとブロッコリーとレタスのサラダ。


「おいしい」思わず口にする。


「よかった」そう言ってまたエンジェルスマイルを見せる。


今この世の中に35歳でこれほどの至福を味わってる男が何人いることか?


特にポタージュスープが絶品だ。頬が落ちそうになる。


「このスープどこで覚えたの?」


岸森は目をパチクリさせ、「自己流だよ」そう言って汗を拭ってる。


「暑いか?」


「いや、大丈夫、冷房きいてるでしょ?」


夏休みも残すところあと2日。暑い日々は続く。


「先生、国語の試験問題見せてよ」


「冗談だろ」


「冗談に決まってるでしょ」


岸森はケッケと笑みをこぼす


「今日はなんか映画観るの?」


「うーん、夜7時くらいだろ……2本が限界だな。」


「何借りたの?」


「「悪の教典」と「終の信託」」


「ふーん、暗そうな映画ばっかだね」


「そうかもね、お前も観ていくか?」


「そうね、「悪の教典」は観たいし、観てこうかな?」



2本観終わると夜中になってた。岸森は俺の肩に頬を寄せて眠っていた。


そのまま毛布をかけ、机でパソコンを開き、仕事の続きを始めた。



夜中2時頃、岸森は「うーん」と声を鳴らし起きる。


「朝まで寝てろよ、いつも聞くけど親御さんたちは心配しないのか?」


「だから2人とも夜は遊び歩いてるから、私に門限なんてないの!」


「ならいいけど」


「先生明日学校でしょ?」


「そうだよ」


「寝ないの?」


「そろそろ寝るよ」


「変な時間に起きちゃったなあ、寝直すか?」


「そうしろ、そうしろ」



8月30日金曜日


岸森は軽く朝食を取って先に出ていく。


なんで女の子の後ろ姿はこんなに切ないのか……。


2013(H25)11/7(木)・2018年(H30)5/9(水)


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