第36回時は流れても……

8月27日火曜日


夏休みも残すところあと4日。授業の準備に追われる日々。


ベーヤンから”9月5日に帰国するぜー!”とメールが来る。


勝手にしてくれっつー感じ。


昼校内放送で沢田研二の「時の過ぎゆくままに」が流れる。


今の心境にピッタリだね。


岸森は日に日に大人っぽくなってる気がする。


まあ”時の過ぎゆくままに”だよな。


LET IT BE……AS TIME GOES BY……どちらでもよろしい。


視聴覚委員もっといい音楽流してくれ。



8月28日水曜日


夏休みもあと僅か。


さて出勤と家を出ようとしたら、この前家の前で眠っていた遠藤くすみが訪ねてきた。


「どうしたんだ?遠藤」


「わたしさあ、ええと……我道倒しちゃった」


「へ!?」


「だから我道に喧嘩で勝ったのよ」


「あの我道にお前が?」


「先生,熱いコーヒー頂戴」


そういえば顔に所々痣があるし、制服も汚れてる。


「お前よく見るとガッチリした体してるけど、なんかスポーツしてたのか?」


「うん、ハンドボールと水泳と砲丸投げ」


「でも我道って柔道から何から有段者だろ?こないだ柔道部の山上をあっさり倒したよな?」


「うん、手加減したのかもしれない、わからない」


あの我道がこんな大人しそうな遠藤に破れたとしたら、天国口一の喧嘩の達人は誰なんだろう?


「で、喧嘩の原因は何なんだ?」


「何って、先生にストーカーまがいの事してるからよ」


「俺にストーカー?そうなんだ……」


「気付いてなかったの?」


確かにあいつの行動はよく読めんけど。


「とりあえずお前も制服来てんだから今日学校だろ?」


「うん、先生コーヒー御馳走様、先に行きます」


遠藤くすみは眼鏡を拭き、颯爽と出ていく、カッコいい奴だな。


今日も仕事だ、ベーヤンは何か月休んでんだ、なぜか腹も立たん。



定時に学校を出て、蒸し蒸しした中帰路につく。


今日も岸森は来なかった、やはり気になる。


夏休みが終わるとまたあの面倒臭い美少女ハーレムに突入か……。


ふいに横を凄いスピードで白い光線が駆け抜ける。


浅利だ。その後を鈍足で追いかけるサングラス男。


ははあん、この鈍足男じゃ浅利に追いつけるわきゃないか……。


2013(H25)10/29(火)・2018(H30)5/7(月)

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