第13回とりあえずモテ男の悲哀

岸森のベータに対するアプローチは浅利や野上に比べれば可愛いものだった。


せいぜい靴箱にピンクの封筒で恋文を寄こしたり、授業中ウィンクする程度。


浅利は相変わらず俊敏な脚力を使い、毎回撒くのに苦労する。


野上は野上で、やはり授業中に色目を使う。


浦兼が野上がイカれてると言っていたのを思い起こす。


岸森は夢見る少女的なところが好感を持てる。顔も可愛いし。


その浅利と野上が最近だんだん大人しくなってきた。


そのわけはすぐわかった。


我道が動き出してるのだ。


第四の刺客ということになる。


まあ岸森が刺客になるかどうか微妙なところだが、第四の刺客か……カッコいいね。さすが我道というところ、多分浅利なんかよりも手強い相手になりそうだ。


望むところだ、さあかかってらっしゃい。



夏休みまであと四日の7月17日、なんか職員室がざわついてる。


汐留先生を捕まえて聞いてみた。


「何かあったんですか?」


「ええとですね、本城先生は知らないと思いますが、ある先生が戻ってくるのです」


「どんな先生ですか?」


「体育教師です。生田直樹いくたなおき先生です。体罰教師で有名なんです」


「ほぉ~」


今時体罰教師なんて珍しいじゃん、面白くなってきたぞ。


「でも体罰教師なんて普通クビじゃないですか?」


「親類が警視総監なんです」


「なるほど」


こりゃどんな人物か興味ある。


その時校庭で女生徒達の話声がかまびすしい。


外に出てみると、竹刀を片手に黒いジャージを着たプロレスラーみたいな体格をした男が堂々と歩いてくる。


なんだイメージ通りじゃん。


2013(H25)8/13(火)・2018(H30)5/3(木)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る