第5話

定められたルールに従って歩んできた

それがこの世界の一部として、果たすべきことと思っているから


漠然と漂う何かに必死で擬態して進んできた

誰のものでもない正しさに、押し固められながら


疑うことはなかったが、

疑心を知ってもなお、目を逸らした

できるだけ楽に正しくいたかった


もし今の僕が、翼をもっていたとして

果たして僕は飛び立つだろうか

行くあてもないのに翼を広げるだろうか


他の人にはない、その翼だけを理由に

僕は空に身を投げ出せるだろうか


安心感に甘えて、保身にほだされて

僕はきっとその翼を隠すだろう


異物であることへの恐怖

同一であることへの劣等感

鬩ぎ合う曖昧な感情


同じであること、そうでないこと

それがこの世界の正しさの基準であるなら

僕には翼を隠す以外の道がない


そうして僕は翼の存在すらも忘却し

目に映る他の多数に擬態する

漠然と漂うあの何かの、一部と全部に成り果てる

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