対策部
とりあえず、この国の長として、彼らがこれからどういう行動をとるかに関しては、監視する必要がある。
それに、転移者といっても、この世界がシステム上必要としているのだとしたら、それなりの特典が自動でついているだろう。
しかし、何らかのバグによってこの世界に飛ばされた場合は、特典は何も得ることができない。
そして、この世界の管理者であるアインのほうに何も連絡が来ていないので、今回はバグでこの世界にやってきたのだろう。
「まったく、面倒なことになったな。」
(それに、異世界について詳しい者も若干勘違いをしている。
確かに、システムによって連れてこられたものだったら、この世界を生きていくのはそれなりに簡単だろう。
しかし、システムで連れてこられていない場合は、この世界の一般人よりも若干強いレベルに合わせられている。
つまり、彼らが思っている以上に、つらいぞ…)
せめて転生者だったら、幼少期からの鍛錬でどうにかなるかもしれないが、彼らはもう、それなりに成長している。
つまり、彼らは、これからこの世界よりも若干強い状態で、帰りを探さなければならない。
(それに、彼らにはかわいそうだが…一応、国家反逆罪もあるんだよな。)
彼らは、今まででこの国にしかいたことがない。
そもそも、この国にいる時間も少しなんだが、それでもこの国にしかいたことがないことになっている。
そして、彼らは冒険者登録をするだろう。
いや、しないかもしれない。しかし、少なくとも何人かは冒険者登録をするだろう。
その瞬間、この国の国籍が決まり、そして、この国の長であるアインを一回殺そうとしていることで、国家反逆罪になってしまう。
つまり、彼らが助かる方法は、冒険者ギルドやその他ギルドに登録しないまま生きていれば、とりあえずは、生きていけるのだ。
(それに、冒険者ギルド以外は危険性がないからな。)
鍛冶ギルドで、ミスが起こってやけどというのはたまにあるが、それでも、冒険者ギルドのような命の危険はない。
(さてどうなるか…)
一応、アインの周りには監視系の魔道具が付いている。
つまり、この情報は場内にいる犯罪対策部のほうに連絡が行っている。
本来は、現時点で、殺人未遂で捕まえたのだが、そもそも彼らはまだ国籍登録もしていないので、この世に存在していないことになっている。
彼らが何かしらの形で、国籍さえ得てしまえば、すぐに対策部が動き出すだろう。
(あーあ。やってしまったか…)
アインがそんなことを考えているうちに、国籍を得てしまった転移者が現れたらしく、さっそく対策部が動き出すのだった。
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