第441話アインの怒り

王国では、市民からの意見を聞けるようにするために、もともと、政府にやってほしい事を書いて、門番に渡すという制度があった。


一応、もう1枚同じ紙を用意しているが、彼は先に、1枚だけ、門番に渡して、政府のほうに願いを聞き届けてもらおうとした。


しかし、その返事はなかった。


通常、紙を出してから、一週間もすると、何かしらの行動を起こしてくれる。


そして、もしも願い事の実現が不可能な場合は、説明をしてくれる。


しかし、今回カイゼルが出した結婚取り消しの意見に関しては、一週間たっても、何の答えも表してくれなかったのだった。


「これは…我々の意見が無視されたということでいいのかな?」


「まぁ、十中八九そうだろう。」


実際、これに関しては、どうすることもできないし、そして、政府側からしても、貴族の署名がたくさん書かれている、この紙を公開してまで、市民に対する説明をする必要はないと感じた。


それに、もともと、この制度に関しては、国のほうに直接ものを言えない、市民のための制度だった。


貴族であれば、年に何回かある、貴族会議でそれを話せばよかった。


まぁ、今回の場合は、貴族会議を待っていたら、先に結婚をしてしまうだろうが。


「だが、国のほうは我々の意思を無視した。

これまで、国に仕えてきてやったというのに。」


今回の件では、下級貴族のほうで、不満が高まった。


しかし、今回の、紙を見て、国側も何もしなかったわけではなかった。


まず、政府側は、当事者であるリリスと、アインにこの紙を見せた。


そして、事態を知ったアインは、今回の署名してきた貴族の中でも、特に力のある者たちには、直接交渉をした。


アインの交渉では、基本的に、最初は説得から始めるが、そのあとは対抗策をとるというものだ。


そして、彼らは最初、アインの対抗策についてやれるもんなら、やってみろと言わんばかりの強気でいたが、実際に、禁輸する品物の量と、そして、品目数を挙げて、彼らの今回の署名から辞退するという発言をしっかりと聞き出した。


今回に関しては、アインのバルバロット帝国の皇帝という立場よりも、世界規模の商人としての力のほうが役立っただろう。


話を戻すと、こうして、今回の署名人の中でも、比較的力を持った人たちに関しては、アインの力によって、署名から抜けさせられた。


しかし、それでも、かなりの数の貴族が署名しているので、まだまだ、貴族は多くいた。


それに、貴族たちは、基本的に調べておく貴族は上級貴族。


同じ下級貴族の者はそこまで調べておかないのだ。


だから、力のある人が抜けていった自体のことも把握できていないのだった。


そしてアインは…


「やるなら、行動を起こしてくれよ。そうすれば、今回の事件に関して大々的に動くことができる。」


何もアインは聖人ではない。


自信の結婚を妨害してこようとしている者たちに、今まで教会に抱いてきた、倫理的な意味での、不快感ではなく、1個人として、感情的に起こっていたのだから。


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