第315話命令権


この戦いに勝利したアインは、自分につけていた魔法を全て解除した。


(さて、アマゾネスの戦士は、基本的に真剣勝負で負けた相手の言うことは聞いてくれるんだけど…)


アインは、その効果を期待して、今回は真剣に戦ったのだった。


そして、しばらくすると、シオドーラが起き上がった。


「あれ?ここは…」


「おはよう。覚えているかな?」


「君は……てめぇ!」


シオドーラは一回戦闘の影響でアインのことを忘れてしまっていたが、すぐに思い出して、アインから距離をとった。


「俺を殺さないで、何の目的だ!」


「だから、最初から言っているじゃん。君は僕の奴隷なんだから、素直に従ってほしいんだよ。」


しかし、それを言っても、シオドーラは屈しなかった。


「否定する!なぜ、我々気高きアマゾネスの一族が、貴様のような、ただの人間に従わなくてはならないのだ!」


「それは…負けたから?」


アインがそういった瞬間、シオドーラは嫌そうな顔をした。


戦闘民族であるアマゾネスでは、卑怯な手を使った勝利に関しては適応されないが、真剣勝負の一対一では、勝った方に負けた方が従うという文化がある。


そして今回、アインは武器などは圧倒的に強い物を選んでいたが、それでも、真剣勝負の一対一でシオドーラに勝っていたのだった。


「クッ!痛いところを…」


「だからね…奴隷になってくれるかい?」


シオドーラはその場で真剣に悩み始めた。


本来、普通の人だったら、逆に奴隷になってくれるなんて言われずに、こき使われ続けるのだから、アインのやさしさによって、現状が出来ているのだが、今まで奴隷になった一族が帰ってきたことの無いアマゾネスの戦士たちには、奴隷がどんなものなのかがわかっていなかったのだった。


「クソ。一族の誇りにかけて、勝者の言うことには従わなくてはならない…奴隷になろう。」


シオドーラがどういった瞬間に、奴隷の証としてつけられていた首輪がいきなり光り始めた。


「な、何だこれは…」


(なんだ、あれは…)


シオドーラも驚いていたが、アインも驚いていた。


アインの居た大陸の奴隷の首輪にはこんな効果は無く、ただただ、相手を従わせるものだった。


だから、アインはさっき、自分が押し倒されたときにも、何でこっちの首輪はその効果が無いのか不思議に思っていたのだった。


そして、首輪の光が収まると、機械的な声が聞こえてきた。


「これは、永遠に効果を持つ命令です。どんな命令をしますか?2つまでお答えください。

また、この命令権は後回しにすることも可能ですが、10日以内に行わないと、命令権が消えます。」


これは、アインにとっては重要な2つだった。


1つ目は決まっているが、2つ目をなんと言ったら良いのか分からなかったのだった。


「1つ目は、これから先、味方に対しての暴力を禁ず。」


(2つ目は、我々に従うことにしたいんだけど、それだと、拒否権の無い奴隷になってしまう。でも、そうしないと、何も従わない奴隷になってしまう…)


そう、アインはシオドーラに必要最低限のことだけを従って欲しかったのだが、従えと言ってしまうと、永遠にアインに逆らえない奴隷が出来上がってしまうから、言い方を考えていたのだった。


「2つ目は……人道的な命令に関しては従うこと。」


正直、この命令が通じるのかは、不安だったのだが、それでも、首輪の機械音は消えて、シオドーラ本人まで一瞬光りだし、その光は一回空中まで行って、シオドーラに吸収されて行ったのだった。


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