第170話勇者 死す
しかし、その扉が開くことは無かった。
「何で開かないんだ?」
「知らねぇよ。だってちゃんとラスボスは倒しただろ。」
「ああ、俺が剣で刺したときに、ちゃんと心臓を刺した感触があった。」
「じゃあ、なんで?」
「しかし、どうする。ボスを倒しても扉が開かないなんて、もしかして、このダンジョンは最初からクリアできないようにできていたんじゃないのか?」
「そんな…じゃあ、私たちの今までの苦労は何なのよ。」
「でも、それ以外考えられなくないか?」
「いえ、このダンジョンはクリアできるようになっていますよ。その扉の開き方はこの部屋にいるボスの討伐です。」
「しかし、ここの部屋のボスは今倒したじゃないか。なのに開いていないなんて。」
ここで今発言した勇者はある違和感を覚えた。
「ちょっと待て、今俺の質問に返事をしたのは誰だ?」
「俺じゃないな。」
「私でもないよ。」
「僕も。」
そしてこの部屋にいるすべての勇者が否定をした。
「そ、それじゃあ、何だ今の返事は?」
「さぁ~?何でしょうね。」
「ッ!?何なんださっきから。いい加減に正体を現せ。」
勇者の1人がそういうと、ボス部屋の暗かった部分から1人の女性が現れた。
「お、お前は。」
「どうしてそこに?」
「な、なんで?」
「こんにちは皆さん。さっきぶりですね。」
そこにはまったく傷の無い、エリがいた。
「何でお前がここにいるんだ!さっき倒したはずだろ。」
「私を倒した?私は倒れていませんよ。」
「何だと?嘘付け。お前の死体はそこにあるんだよ。」
そして勇者が指を指した場所には何も無かった。
「おい、さっきの死体はどこに行った。」
「ほら、死体なんか無いでしょ。」
「まさか、このダンジョンは死んだモンスターを一回ダンジョンの中に取り込むことで復活させることができるのか?」
「それは無いです。もしもそうだったら、私が復活するまでの間は、扉が開いているはずですから。」
「それじゃあ、何で死んだお前がそこにいるんだよ。」
「だから何度も行っているじゃないですか。私は死んでいないと。」
「どういうことだ?」
「いや~。皆様がんばりましたね。私の魔力によって作られた分身相手に。」
「分身だと?」
「はい。分身です。さっきあなたたちが必死に戦っていたのは分身なんです。ですからいくら分身を倒したって扉は開きませんよ。」
「そうだったのか…しかし、分身を作るほどの魔力を使ったはずだ。皆、今ならいけるかもしれないぞ。」
「ちなみに言っておきますが、さっきの分身には私の魔力をぜんぜん使っていませんよ。」
「それは無い。分身を作るだけでも結構な魔力を使うはずだ。ましてやあそこまで強化するには尋常じゃない魔力が必要になる。」
「私を人間の基準で考えないでください。それではそろそろいなくなってください。」
「皆、さっきの攻撃を思い出すんだ。油断すr」
勇者たちは認識する前に灰となって消えてしまった。
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