あるギルドの一日 ー ファンタジー好きに捧げる -

空知音

第1話ちっちゃなギルマス


 私の名前はキャロ、アリストの城下町でギルマスをしています。ギルマスと言うのは、ギルドマスターを縮めた言い方ですね。

 ああ、異世界の方にも分かるように説明しろってことですね?


 ここは、パンゲアという世界にあるアリストという国の城下町。

 アリスト国は、最近王様がお亡くなりになり、聖騎士でもある美しい少女が女王として即位されました。


 私のギルドでも、ギルマスをしていたマックさんが退任し、その後を私が引きつぎました。

 最近は、女性が活躍する時代になったのかもしれません。


 ああ、そういえば、このことも話しておかなくてなりません。

 この城下町の住民は、ほとんどが人族です。異世界人はほとんどいません。

 実は、先ほど話した女王陛下は異世界人です。

 長く美しい黒髪をしていらっしゃるのですが、この黒髪と言うのが異世界人のあかしなのです。


 うーん、堅苦しいのは苦手だから、普段の口調で話すわよ。

 ウチのギルドにも、一人異世界人がいるの。

 彼は女王陛下と一緒に同じ世界から転移して来た友人だそうよ。

 いつもぼーっとしている少年で、ギルドの仕事、つまり採集や討伐がきちんとできるか心配してたんだけど、あれよあれよという間に鉄ランクから、銀ランク、そして金ランクにまでなっちゃったの。


 先代ギルマスのマックさん曰く、「ウチのギルド始まって以来の逸材」だそうよ。

 私はのんびりしている彼しか知らないから、とてもそんな風には見えないけど。


 少し話が逸れてしまったわね。


 なぜ異世界人の話をしたかというと、実は私も異世界人なの。

 私の出身世界はエルファリア。

 人族から『エルフ』と呼ばれる種族が住む世界から来たんだ。


 私もエルフですかって?


 それが違うのよ。

 まだ秘密にしていることなんだけど、私は、エルフたちが『西の島』と呼ぶ大陸の出身なの。

 名前に『島』と付いてるけど、『西の島』は、れっきとした大陸よ。


 大陸の中央に大きな山があるのだけど、私の一族は、その西方にある森に住んでるの。

 種族の名前はフェアリス。妖精族とも呼ばれているわ。

 成人しても、せいぜい人族の半分くらいしか身長がないのよ。

 非戦闘系の闇魔術が少し使えるくらいで、人族よりずっとひ弱よ。


 前ギルマスのマックさんは、人族の中でも大柄で力も強い人だったから、なぜこんな私をギルマスに選んだのか、今でも分からないの。


 もしかすると、ギルドにいる時間が一番長いのが私だからかも知れないわね。

 なにせ、私の住居はこのギルドだから。


 迷子になって困っていた私を救ってくれた有名な冒険者さんが、ここで住めるようにしてくれたんだよ。

 家賃を払わなくていいから、本当に助かってる。


 その代わり、朝から晩までギルドの仕事をこなしてるわ。ありがたいことに、六日ごとにお給金も出るの。

  採集はともかく討伐なんてできないから、書類仕事や新米冒険者の指導が主な仕事。


 このギルドでお世話になって、もう十年くらいになるかなあ。

 あっという間だったわね。


 ギルドって、どんなところなの?

 百聞は一見に如かず。

 ギルドの一日を見てもらいましょうか。

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