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惣菜屋のコロッケは肉屋のコロッケとは違ってかなり家庭的な味がする。ゴロゴロのジャガイモと少なめのミンチ肉がなんだか懐かしい味がして好きだ。そんなコロッケを片手にずらりと楽器の並ぶ店を横切る。
ばれない様に自然に、中に視線を送ると確かにその美人はそこにいた。何度も通っているはずなのに、どうして気づかなかったんだろう。
店番でもしているのだろう、涼やかな表情でカウンターに座っている。
まじか、ほんとに楽器屋の奥さんだったわ。
別に信じていなかったわけじゃないけどやっぱり自分の目で見てみたい、とか思っちゃうわけで。
「んぐんぐ」
そっかー、そうだよなぁ。あんな美人が結婚していないなんてことないよなー、なんて。勝手に創り上げていた美女像がガシャンと自分の中で崩れたのが分かった。うんうん、なんか生活感が見えなかったと言うか、手の触れられない美人って感じで思っていたからよけいかもしれないけど。
いや、別に失恋したわけじゃないし。なに。子供さんと楽しそうに歩いていたじゃない。
目の保養に、憧れ的なものを抱いていた人に、例えるならアイドルに実は恋人がいて幸せな生活を送っていましたって言われた気分、的な?
関わることなんてないと思っていたし、べつにあの人とどうなりたいって思ったわけじゃないけど、なんとなく『ふーん』って感じ。
なんて言う感情なのか分からないけど。
「でもあれでピアノ弾けないのとか、逆にちょっと可愛いかも」
必死に練習したけどやっぱり扱えなくて周りの人にばかにされていたら可哀相だなぁなんて。
ま、俺が気にするようなことじゃないんだけどさ。
「・・・コロッケ二個にしたら良かったなぁ」
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