no.02 富士の樹海にて

トレッキングが趣味の友人がいた。

彼は昔、ふと思いつきで富士の樹海を散策してみることにした。

目的の場所につき、さっそく辺りを歩いていると、スーツ姿の男性がぼんやりと座っているのが目に入った。

もしかして、と思って話を聞いてみると、やはり自殺が目的だった。

友人はとりあえずその人を車に乗せて地元の飯屋に連れて行った。

ご飯を食べさせて相手が落ち着くまで話を聞いたそうだ。

でも、相手の自殺の意思は固く、止めることはできなかった。

飯代を払おうとすると、話を聞いてくれたので、と逆に飯代をだしてくれた。

その後、友人は彼と別れた。


数日後、気になり富士の樹海に戻ってみると男性の首吊り死体があった。

しかし、別れてから数日しか経っていないのにやたらと腐敗している……服は似ているが、彼ではないのではないのでは?

そんなことを考えていた友人が、ふと、死体の手元に目をやると、なにやら白いものを握っている。

その手を開いて見てみると、あの時の飯屋のレシートだった。

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