11 マー○と妄想と涙

 ルビノワの話が始まる。始まるのだが、前回幽冥牢に重傷を負わせてしまったので、表情が暗い。

「皆さんこんばんは、ルビノワです。

 先日はホントにお騒がせ致しました。私と朧の仲裁に入って巻き添えを食らって怪我をしてしまった主殿こと幽冥牢さんですが、順調に回復に向かっております。

 そこで今日は朧と私がお知らせがてら、昨日の事後報告をさせて頂きます。主殿から

『いつものように元気に楽しくおやり』

と言われておりますので、元気にやらせて頂きます」

「皆さんこんばんは、朧です。昨日はすいませんでしたあ。げしょっ」

「ほらっ、元気を出すのよ、朧」

「はい……そうですねえ!

 今は亡きご主人様の為にも頑張ります☆」

「さらっと殺すな!

『そうよね、頑張らなくちゃね☆』

とか言いそうになったわよ!?

「強靭な精神力ですねえ」

「あんたに言いたい。

 では報告に戻ります。正直言いますときちんと休ませたかったのですが、主殿がどうしても続きをやると聞きませんでした。幸い、

『それくらいならいいでしょう』

というお医者様の許可も出ましたのでやらせてみました」

「昨日のご主人様は凄い気迫でした。痛みで脂汗をだらだら流しつつも、『コミッ○マスターJ』の締め切りギリギリの漫画家さんの如く熱いまなざしを向けられ、

『俺をPCの前に連れて行ってくれっ! この程度の痛みでは俺の妄想は止まらないんだ……っ!!』

とか言って

(それはそれで如何なものかしら)

と思いながらいざ私達が連れて行くと、元々車椅子で移動したのに

『ガイ○ー!!』

とか叫んで事務用の椅子に移り、普通にPCの電源を入れたんですよう。

『ポチっとな』

だなんて凄くかったるそうに」

「でも主殿は所謂『マー○』じゃなかったのでガイ○ーは来なかったんです」

 涙するルビノワであった。

「PCの画面に壁紙としてでも写るのかなとか思ったんですけど、そこに現れたのはゲーム『こみっくパー○ィー」の高○瑞希でしたし。良く分かりませんよ。あの人。

 まあ横山○輝先生デザインのガイ○ーが来たりしても嫌ですけどねえ☆」

「そんなあれこれがあって、病室で彼は今日更新予定にしていた小説を書き上げたのです。それが終わると

『これで……良かったんだよな……皆……』

と死んでしまいそうなセリフを言いながら、ぐったりとベッドに横になられたので、つい我を忘れた行動に出そうになりました」

「いきなり自分のカバンに手をかけるとルビノワさんは、見ているこちらが

(やだっ! そんなの使われたらおかしくなっちゃうよう!!)

と赤面せずにはいられない様な道具を手に取り、ご主人様の寝巻きに手をかけたのです。

『あああっ、何故今そんなものを! 駄目ェーッ!!」

と泣き喚いて暴れるご主人様でしたがへぶぅっ!!」

 続きを話そうとする朧の下顎にルビノワの突き上げるようなクロスチョップが炸裂した。

「自分の好きな様に事実を歪曲させるな!

『道具』って何よ、『道具』って!?

「『アイテム』の適当な和訳です」

「あら、ありがとう朧☆ いい子ね……って違うっ!!

 いつ私が

『体力の落ちた状態の主殿を手篭め同然の恥辱にまみれさせようと襲いかかった』

というの? あんまり自分だけが楽しい想像ばかりしているとその『道具』っての、あなたに使うわよ!?」

「……ルビノワさんがお望みでしたら……どうぞ」

「そうそう分かれば良いのよ……って、ええっ!?」

「ですからぁ、

『どうぞ☆』

って……その、申し上げたんですっ。何回も言わせないで下さいっ……いけず♪」

 頬を染めつつも、何やら嬉しそうにルビノワ嬢を見つめる朧。ルビノワは頷いて告げた。

「話を戻します」

「う、嘘っ……私を捨てるんですかあ!?」

「捨ててないっ! その話は後!」

「後!? その間じりじりと私を焦らすんですね……どこまでも張り巡らされた策略に絡め取られた私の運命は一体……」

 眩暈を起こすルビノワ。スピーチ台に手をつくと、哀願する様に言った。

「だ、誰か~……この人変なんです」

「そしてルビノワさんも何者かの手によってピンチに……助けて! ルビノワさあうっ!!!」

 最後まで言わせる前に朧の首筋にチョップを食らわすルビノワ。

「初めからまとめるわよ?

 親友の貞操を奪う為の策略を張り巡らせた役回りにさせらている私が倒れたんでしょ? あんたのいかれた設定によると!

 なのに何で私に助けを求めるのよ? 本末転倒じゃないの。訳分からん!」

「色々言ってますけど、私の話をきちんと聞いてくれているんですね。

 そんなルビノワさんの事が私は大好きですよ☆ ちゅっ☆」

「ほっぺにチューするなっ! 今のあんたに頭撫でて欲しくない!!

 話が進まないのよ~!」

 疲れ果て、泣き出すルビノワ。しかし、最終的に縋り付く相手はやはり朧だった。

 そんな親友を優しく抱きしめ、頭を撫でてやりながら優しく囁く朧。

「では続きは私がやりますから見ていて下さいねえ☆」

『勝手にしろ』

という風に手を振り、泣きながら朧の胸にルビノワは顔を埋めた。

「そういう訳で、今日の更新は小説の続きをアップしたのと、18日分から21日分までのお知らせを『過去のお知らせ』に移したという二点です。

 ルビノワと朧がお伝えしました。ごきげんよう。ばいば~い☆」

「何で初めからそう出来ないのよ~……お馬鹿っ」

 ぶんぶんと笑顔で手を振る朧を睨み付け、抱き付いたままのルビノワが憎らしげに吐き捨てた。

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