第24話 『知る』チカラ
普通の拒絶じゃなくて、能力を使った『拒絶』。
たしかにそう聞こえた。聞き間違いなんかじゃない。
「どうなんだ?」
彼が確かめるように尋ねる。
僕は、咄嗟に言われたのでなかなか返事ができなかった。
「何も言わないってことは、認めるってことだな…」
彼は、僕に気を使うような口調で慎重に言葉を選んでいるようだ。
「なんで分かったの?僕のチカラ」
やっと声らしい声を出すことができた僕は、1番聞きたいことを率直に尋ねる。
「俺もあるからだよ」
「え?それって…」
「能力者のチカラを『知る』チカラ」
その夜は、彼が説明を交えて僕に教えてくれた能力についてぼんやりと考えていた。
僕だけだと思っていた。周りの人間にはない、普通じゃない、特別なチカラ。
特別な存在であることの喜び。
僕以外にもそんなチカラを宿す人がいることに少しだけショックだった。
彼が言った『能力者』という言葉。僕たち2人以外にも同じようにチカラを持つ人が何人もいるから、『能力者』という、一般の人と一線を画し、分類するような言葉が出てきたのだろう。
それに、僕にチカラがあるだけでなく、どんな条件が揃えば『拒絶』ができるのかということも、すらすらと説明された。
僕よりも正確に、『拒絶』に要する条件を把握していた。
『拒絶』を所有する僕の、なんとなくの感覚ではなく、『知る』能力を用いた正確な認識。
経験から、なんとなく感じていた、100%の意志ではないと発動できないこと、拒絶したい事象を3時間前に把握していることを彼は事細かに説明した。
それから、もう1つ。これは、彼に教えられるまで知らなかった。
『能力が使えるのは17歳まで』
つまり、18歳になった瞬間、このチカラが消滅してしまうことだ。
信じがたい話のように思えたが、よくよく考えると、能力を持っていることや、その能力が『拒絶』であること、そして僕がなんとなく感じていた条件までも当てたことから、十分に説得力があるし、信用せざるを得ない。
何より、能力を使った時間も分かるみたいだ。
正確に言えば、能力を使った瞬間に感覚として伝わってくる、リュウはそう言っていた。
だから、分かったんだ。
樽本さんの一件以来、彼が一方的に遊びの予定を立てた日に、まるで狙いすましたかのように、彼の家庭の用事ができたり、彼が急に体調を崩したりしたことも、単なる偶然とは思わなかった。
能力を『知る』彼、発動した瞬間も分かる。
まるで監視されているような感覚。
ハッ、っと気付いた。
もしかしたら。
能力を発動した瞬間を把握できるなら、『あのこと』も知っているはずだ。
樽本さんを『拒絶』して、彼女から走ることを奪ったのも。
あれは交通『事故』じゃなくて、人の手による『事件』だったということ。
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