第22話 意気投合
好きなゲームで意気投合した僕たちは、その日からずっと、昼休みや移動教室、10分休みでも、よく話すようになった。
最近発売したロールプレイングゲーム『ドラゴンブレードⅡ』。通称ドラⅡ。前作は、知る人は知る、くらいの人気だった。
しかし、彼は前作からのプレイヤーらしく、かなりやり込んでいたらしい。
時末くんのような人がゲームやアニメを愛するほどに好きでいるのが、5月になった今でも信じられない。
彼のようなアウトドア派の人間なら、中身も知らないで、作品のタイトルやキャラクターのビジュアルだけで揶揄や侮辱めいた感情を持つはずだと、ずっと思い込んでいたが、彼は興味を持った作品を1つ1つ愛している。
逆に、中身を知り尽くしている人間は、最初のうちは話していて楽しいのだが、次第にその作品の知識は自分の方があるんだと、誇示するかのように偉そうに考察したり、「お前、そんなことも分からないの、あのキャラはこうだよ」と作者でもなんでもないのに、自分が正しいみたいに相手を否定してくるタイプもいるのだが、彼はそんな人間たちとも違っていた。
ドラⅡには、前作以上にやり込み要素があり、本編の他にもサブシナリオというものがある。これは、攻略しなくても本編のエンディングは観れるのだが、攻略することで、特殊な武器やスキルを入手したり、主人公の仲間や敵キャラの過去を知ることができる。
本編のド派手な展開より、サブシナリオの複雑で深みのある展開について熱く語る彼は、熟練の古参プレイヤーだし、そういう彼を、すごくいいと思った。
7月になり、あっという間に1学期の始業式になった。
お互いに、部活動がない日だったので、一緒に帰っていた。
国道を自転車で通る。僕たちは、倒れそうで倒れないスピードを保ちながら、7月に発売したRPG『レジェンドウォー」の話をしていた。
この作品も、ゲーム要素だけでなく、物語の要素も充実している。
作品自体の人気もそうだが、現在、人気上昇中で、後に大作となる『アサシンガール』を書くラノベ作家、伏見ソウシの作品としても話題になっている。
「フレアビースト、あれ強すぎんだろ〜。30レベでも勝てねえのかぁ」
中盤のダンジョンのボスが倒せない、とギラギラと僕らの肌を焼く太陽に向けて心底あきれた声を出す時末くん。
「あれ、楽勝じゃない?僕は24レベで勝ったよ?」
プレイヤースキルは彼より上の僕は、勝ち誇ったかのように彼に優越感たっぷりの笑みを浮かべる。
「お前嫌味かっ!このやろ!」
背の高い彼は、じゃれ合う時はいつも僕の頭を上からくしゃくしゃする。僕も「やめてよ」と、笑顔で応じる。
「じゃあ、おれんち今日も寄ってけや。イヤとは言わせねえぜ。塾もねえだろ?」
屈託のない笑顔で彼が言う。
「今日もいいなら、超行きたい」と僕も応じる。
「さっすが!」と彼が喜んでいるのがわかる。
この言葉に付け加える。
『サトシ』と。
「居心地いいんだよね、『リュウ』の家」
いつの間にか、そんな仲になっていたのだ。
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