25.このために来ている。【1】

時間を適当に潰して来たが、それでも早めに食堂へ到着したため一番乗りしてしまった。


これではまるで、食に対する熱意がすごい人みたいに思われてしまう。


人目が気になるお年頃としては、食いしん坊って思われるのはちょっと遠慮したい。



取り敢えず麺類3種類たのもう。






ラーメン、うどん、焼きそばを食べ終えた頃、三原君がオープンテラスに来たのが見えたので、食器をさげ菓子パンを食べながら移動。




「早く来てたなら席確保しといてくださいよ。天気良いし、危うく座れないとこだった。」


「だって一刻も早く麺が食べたかった。一刻も早く麺が食べたかった。」


「麺への思いが溢れてたことはわかった。」


やれやれって顔で三原君がお弁当を取り皿に取り分ける。




「「いただきます」」




何から食べようかな。

鶏の唐揚げにしよう。


「…??」


鶏??


「…美味しくなかった?」

「これって鶏の唐揚げ?」


「違うよ。豚こまと木綿豆腐の唐揚げ。」


「へぇー。鶏の唐揚げっぽい味だよね。」


「そうだね。」



アスパラのベーコン巻き、牛肉の佃煮を食べ、海苔が段々になったご飯を食べる。


醤油の染みたご飯美味しい。



食べ終わりそうになると、三原君が新たに取り分けた物を差し出してくる。



鶏の磯辺焼きに、ハンバーグ。そしてハンバーグからのハンバーグ。煮物と見せかけてハンバーグ。


「ハンバーグちょうだい。」

「野菜も食べなきゃダメだ。」


そう言って山盛りにされたゴボウと人参のサラダと、蛸と空豆のサラダを差し出す三原君。


女子に山盛りを渡すってどうなの。まるで私がものすごく食べる人みたいじゃないですか。


ゴボウのほうはマスタードとマヨネーズのピリ辛で、蛸のほうは甘酸っぱい味がした。林檎酢とか、そんな感じのヤツかな。



次は蛸の煮たヤツ食べよう。


「すごく柔らかいね。」

「美味い?」


「うん。味もすごく好み。」

「それは良かった。」



蛸を最初に食べたのって誰なんだろう。見た目グロくて食べれるか分からないのに、食べようと思うその勇気がすごいよ。


何処の誰かは知らないが、勇者と呼ばれるに相応しい。彼もしくは彼女は、異世界に召喚され、今頃はステータスオープンとか言ってるかもしれない。


そして勇者の称号に相応しく、グロくて食べれるか分からない未開の生物を次々打ち倒し、食糧事情の未来を切り開き、人々の心に希望の灯を灯してくれてることだろう。




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