花火


「花火を最初に考えたのって、どんな人だろうね?」


 会場へ向かう人波に飲まながらも、

 隣を歩く君は興奮した面持ちだ。


「とんだ目立ちたがり屋だったんじゃないかな」


 人疲れしてしまった俺は、

 ぐったりしながらそれに答えた。


 彼女の浴衣姿は最高だけれど、

 この苦行から今すぐのがれたい。


「私は、凄くロマンチックな人なんだと思ってるの」


「ロマンチック?」


「花火玉って、たくさんのワクワクや

 ドキドキが詰まってるでしょう?

 大勢の人を幸せな気持ちにできるって素敵よね」


 それを聞いた途端、俺の導火線に火が点いた。


「大勢の幸せは花火職人に任せるよ。

 俺は君だけを幸せにしてみせる」


 はぐれないように繋いだ右手。

 そこへわずかに力を込めた。

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