半分


 暖かな午後に、

 ソファで本を読んでいた時だ。


「あった。あった」


 僕の側へ来た君は、

 ペン立てから、

 ひょいと万年筆を取り上げた。


 「貸して」「いいよ」という

 やりとりなんて存在しない。

 息の合った相棒同士のように、

 遠慮のないやり取りだけがある。


 親しき仲にも礼儀あり、

 なんて言葉もあるけれど、

 僕らの間では

 余計なお世話だと言わせてもらうよ。


 僕のお気に入りを君が使う。

 たったそれだけのことが、

 なぜかとても嬉しくて。


 君に認められたようで、

 とても誇らしい気持ちになるんだ。


 好きなものは半分ずつに分け合いながら、

 僕と君の人生はひとつにしてみないか。


「ねぇ。結婚しようか?」


 それはとても自然な流れで、

 そっと口をついたんだ。

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