こがねいろ


鞄を担ぎ、さびれたホームへ降り立つ。


一歩を踏み出す度、

靴底と砂がこすれる耳障りな音。


この町を出たあの日から、

知らずに積もり続けていたような、

切なさを呼び覚ます寂しい音だ。


顔を上げた先には、

まるで時が止まったように、

代わり映えのしない町並みがある。


良く通っていた本屋さえ、

今も変わらずあることが、

本当に不思議で。


きっと、都会で暮らす私だけが

大きく変わってしまった。


そうして微かに漂ってくる潮の香り。

その懐かしい香りは

海が近いことを思い起こさせた。


記憶の波が寄せるように、

学生服姿の私が駆け寄ってくる。


この町を出て成功してみせると、

希望に溢れていたあの頃。


今の私を形作った、

こがねいろに輝く、大切な想い出。

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