第106話 似たような環境です

 さて。

 何故僕が上に一緒について行かなかったか。

 それは津々井先輩と柏先輩が下に残ったからだ。

 と言う事は、ひょっとして。


「上の風呂は女性専用ですか」


「混浴という事になっているけれど、一緒に入る度胸は無いな」

 と津々井先輩。


「まあ全員上がったら後で入ればいいさ」

 これは柏先輩だ。


 なるほど、今の時点で上に行かない理由は理解した。

 さて。


「ところでこの家らしき物は何なんですか。空を飛んでいるような事を言っていましたけれど」


「その通り、空飛ぶ家さ。他から見えないように魔法がかかっているし、所有者が呼べば何処へでもやってくる。ついでに言うと最高移動速度は時速500キロ、燃料費いらない。風呂キッチントイレガス完備。20メートル以内の人を直接中へ招き入れる事も可能。存在そのものが冗談みたいな魔法の産物だ」


 うん。

 色々便利なのはわかった。


「どうやってそんな便利な物を手に入れたんですか」


「これは文明ブンメーが答えるべきだろうな。持ち主の1人だからさ」

 津々井先輩は文明ブンメーと呼ばれているらしい。

 そしてこの便利な家の持ち主だそうだ。


「今年の4月、この世界の次の時代を占う戦争があったんだ。うちの学校を舞台にして。まあ戦争と言っても誰も死なないタイプだけれど。

 それで買ったのが僕と透里と理奈さんのチーム。その賞品がこの透里が設計、理奈さん補正のこの家という訳だ。ちなみに作ったのは律花先輩。うちの部長だけれど本来は運命の魔女、年齢不詳にして世界的魔法使いの1人らしい」


 なるほど。

 よくわからないけれど、何となくわかった。


「つまりそっちのサークルも普通の人以外がいる訳ですか」


「男2人以外は全部そうさ。魔女に錬金術師に祈祷師、まあ先生も祈祷師か」


「祈祷師も普通の人間以外に含むなら、こっちも僕以外は普通じゃない人間ですよ」

 先輩2人は頷いた。


「同じような境遇という訳か。先生もどうも似たような感じらしいしさ」

「そっちの先生の方が料理に裁縫にと器用そうですけれどね」

「確かに」


 僕は理解した。

 つまり僕らは似たもの同士だって事を。

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