第56話 学園に対する手がかりと考察

 微妙に今まで聞いたり感じたりした事を符合するような気がする。

 先生がちらりと話した移転の話とか。


 でも。

「生まれてくる子供が8割以上女性というのも不思議ですよね」

 未亜さんは頷く。


「ええ、一般的な人類でしたらほぼ同数か、やや男性が多いのが普通。

 ただ、ある特殊な一族、種族と言っていいのかもしれません。それに限ると男女比が大分異なるところもあるのです。例えば彩香さんの種族もほぼ女性なのです。逆に男性多数という種族もいるのですけれど」


「彩香さんは外部生だけれど」


「ええ。この学校のメインの種族とは全く違う種族なのです。でもある意味普通の人間よりは私達に似た種族であるので、この学校が選ばれたのです」


「僕はきっと普通の人間だと思うけれど」


「ええ。悠君と草津先生はいわゆる一般的な日本人なのです。まあ先生はちょっと色々特殊技能を持ちすぎで、普通と言っていいかはかなり疑問が残るのですけれど。

 あと川俣先輩もちょっと違う種族なのです」


 ちょっと考える。

 そして取り敢えず手がかりのあるところから。


「なら美洋さんも未亜さんも、この学校の本流的な種族なんですね。未亜さんが美洋さんをお姫様とからかって言うのも」

 種族というのも何か妙な単語だ。

 でも未亜さんは頷いた。


「ええ、正解なのですよ。厳密には私は傍系の、しかも混血なので色々微妙な立場ではあるのですけれど。美洋さんは本家筋にあたる5家のひとつの長女なのです。ただ私のお姫様はからかいと冗談ですが、本気でそう扱う連中もいるので参考まで」


「何か面倒そうだな。時代がかっているし」


「実際面倒で時代遅れなのです。大人達もそう思っている方が多いのです。他ならぬ本家ですらそう思っているのです。

 でも慣習なんでなかなか抜けない。だから学校を里から離して全寮制にしたり、色々改革を進めている訳なのです」

 里、という言い方も今時何か妙だ。


 さて、今聞いた事をちょっと整理してみる。

 ○ この学園はある種族のために作られた

 ○ 美洋さんはその種族の本家筋の長女

 ○ 彩香さんと川俣先輩はまた別の種族

 ○ 僕と草津先生は一般的な日本人

 こんなところか。


 なら次にすべき質問は。

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