異類異形は何してる?
高来 和良
第一章:振り回されてる。
Prologe
草木だけでなく住人も家畜も眠りにつく深い夜。
しかしこの時ばかりは眠気を忘れ、固唾を飲み、神に祈りを捧げながらある一点を見つめていた。
普段は村人の憩いの場、お祭りの日には大きな櫓が建てられる広場。
そこには大量の金属片を被った人間の死体が何十と転がっていた。
「さあ姫様、今度こそ世界を我々の手で治めましょう」
その中心に巨大な化け物の姿があった。
二本の大きな角を携えた牛のような頭、炎が閉じ込められたような赤い目、月と松明の光に艶かしく反射する筋骨隆々とした黒い胴体は並々ならぬ威圧感を発している。
そんな化け物が嬉々とした様子で両手を広げ、何の力も持ってなさそうな華奢な体格の少年に向かって跪き、首(こうべ)を垂れているのである。
その様に遠巻きに見ていた女性達から悲鳴があがるが当の少年は平然としていた。
「お断りするわ」
少年の女言葉に化け物の笑顔が凍りつく。
「そもそも、私は最初から世界(そんなもの)なんて求めてない……あなた達が勝手に私を旗頭にして勝手に宣戦布告して返り討ちにあった。そうでしょう?」
「しかし、あなたは我々が王の娘! この世の全て以外に望むものなど!」
困惑して叫ぶ化け物に少年は死体を避けながら歩み寄った。
「あんなやつと一緒にしないで。自分の欲望のためだけに動いて、私や母上、他人(ひと)のことなんて全く考えなかったあんなバカなやつと。私が欲しかったのは……」
「あ、主様を、愚弄した、だと……!」
少年の言葉を遮り、化け物が怒りの声をあげて立ち上がる。
そしてその手に炎の柱が生まれ、振り払った瞬間に黒鉄の長槍が姿を現わした。
「貴様、姫様の意識を甦らせたように見せかけただけだな! この私をそんな三文芝居で騙せると思うな!」
「あなたも私の話を聞いてくれないのね……。いいわ」
化物の反応に失望したかのように寂しげに呟いた少年は右手に握りしめていた銃の口をゆっくりと自分のこめかみに押し付けた。
「ならせめて、私の糧となって死になさい」
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