作戦開始

 皆様、初めまして、めんdoiと申します。

 今回初めて作品を投稿しました。

 戦記物しかも恋愛、魔法、ファンタジー要素無しで、申し訳程度の転生と戦闘中には直接関係ないチート要素があるばかり。

 時代の流れから外れた作品ではありますが、どうぞ完結までお付き合いください。

 短編のつもりで書いたので数話で終わる予定です。

 完結後に機体の設定を公開します。

 結構執筆に時間がかかっているので矛盾があるかもしれません。


帝国side

 太平洋東部、赤道付近、空母仙龍せんりゅう艦上戦闘機部隊。甲板には発進を待つ戦闘機。

 カタパルトは蒸気を噴き出しながら大質量の機体を空中へ送り出す。

 発艦が終わり、上空で合流して編隊を組んだ30機の壱式艦上戦闘機は戦場へ向かって飛び去った。




「赤城隊長、あと30分で作戦空域に到達します」


「そうか、この辺りから敵邀撃ようげき機の行動範囲内だ。いつでも戦闘できるようにしておけよ」


 敵の邀撃ようげき機は航続距離がおよそ340km、無線での連絡から会敵までに進む距離を入れるとぎりぎり到達範囲だが、戦闘で消耗する燃料を考慮する帰還不能になる。

 しかし、増槽の装着で620km前後まで延びるため、ここまで飛んでも余裕をもって戦闘を行える。

 すでに敵の哨戒しょうかい網の中ではあるが、帰投時の燃料を考えなくて良いこの範囲では敵機の行動に縛りが無くなり、より脅威が大きくなる。

 隊長は気を引き締めるためにも隊員達に声をかけた。


「「「はい」」」


「1時20分の方向、距離不明、敵哨戒機らしき機影を確認。こちらに気付いているかも不明です」


「そのまま観察を続けろ。様子を見てどうするか決める。機種の判別はつくか?」


「オウルもしくはスーパーオウルと思われます」


「夜間戦闘機か、なんでレーダーをつけてないんだ?」


 隊長機の逆探には反応がない。


「不明ですが不具合かと、鹵獲ろかくしたオウルには電探に致命的な欠陥があると聞いています」


「そうだったな、なら機種はオウルか? スーパーオウルは電探を改修して、高速飛行中10度以上の迎角をとると昇降舵が利かなくなる不具合の修正をした機体だろ?」


「電探の不具合は完全解決してないそうなのでなんとも」


「青木隊員機がレーダー波を受信しました。発覚する可能性があります」


「参ったな。ここじゃ雲の中に入れない。絶対に曇って欲しくもないが」


 隊長の言うとおり、作戦空域付近はほとんど雲の無い快晴。

 この付近はすぐに天候が崩れるのだが晴れていることも多々ある。

 そして、一度天候が崩れれば大嵐になる。突然雲が現れたとしたら作戦空域からの離脱を余儀なくされる。

 隊員達の乗る機体では積乱雲内の乱気流に耐えられない。


 しかし、この壱式艦戦といい、零式陸攻といい、百式戦闘機といい、潤沢な資源を確保したことといい、定方様は一体何者なんだ?


 隊長は操縦桿を握ったままそんなことを考える。

 定方哲二は兵器の設計、戦略、戦術、新技術といったあらゆる分野での指導を行う謎の人物だ。

 この戦争の開戦5年前に総司令に着任したと思えば最初の3年で帝国の工業力を10年分以上押し上げ、加工精度を飛躍的に向上させた。

 また、地質学にも詳しく、採掘可能な油田を10箇所以上発見している。

 外交の腕も良く、技術提供、人材派遣などの援助と引き換えに東南地域方面の資源国を味方につけた。


 満を持して開戦したこの戦争では敵の離島基地への奇襲から始まり、瞬く間に海上を封鎖、無制限潜水艦作戦で大陸への海上路をことごとく破壊し、開戦直後から空中給油技術を用い、重爆で本土への空襲を行い工業力を削ぎ落としている。


 我々の国と違い、自国で鉱山資源を産出出来るため、効果は緩やかだが年々純度の低い鉱石や質の悪い原油の精製を行うようになり、戦力の補充が利かなくなってきている。

 当然そういった施設は最優先で破壊されるため生産は消耗した兵器の補充でいっぱいいっぱいのはずだ。

 我々は前線まで最新機体を運用しているのに対して、敵は更新が遅れている。


「考え事をしてると敵機を見逃しますよ、隊長」


「ああ、すまない」


「俺は定方様が何者でも高性能な機体を提供していただけるだけで満足です。最近は新しいエンジンの話もあるし」


噴式ふんしき発動機のことか?定方様がおっしゃるには音より速く飛べるようになるらしいな」


「隊長、鈴木隊員、無線を私用で使わないで下さい。ただでさえ見つかりそうなんですから」


「俺達以外にも電波を出しているやつなんてたくさん居ますから、大丈夫ですよきっと」


「敵機が近くにいるんですから止めてください。あ、電波が連続して入ってますねこりゃばれてますわ。おい鈴木隊員!」


「な、なんで俺だけ」


「隊長は隊長ですから」


「気を落とすな鈴木、後でおごってやる」


「絶対ですよ。殺されたら承知しませんからね」


「青木、こっちもレーダーつけてくれ」


 20秒ほどで高感度レーダーが付近の空域を写し出す。


「はい。今のところ機影はさっきの哨戒機一機だけですね。基地方向へ全速飛行してます。敵の戦闘機が迎撃に来ることが予想されますが迂回しますか?」


「いや、いい。どうせこの後相手をするんだ。ならここで落とした方が楽だろう?洋上なら対空砲もないしな」


 敵の邀撃ようげき機ピジョンは最高速度700km/hで維持旋回率が自機よりも高い高性能機だが、反面航続距離が極端に短く邀撃ようげき任務にしか使えない。

 開戦1年目にして本土に爆撃隊が到達し、度肝を抜かれた合衆国が守らなければならない施設を防御するために作った戦闘機だ。

 まあ、高性能というのは向こうの基準でこちらが乗っている壱式艦上戦闘機は最高速度750km/hと開きがある。

 一般的に航空戦では速度差が30km/hあると追い付けないと言われているので結構致命的な差だ。

 機体重量はおよそ6,700kgと、かなり重いが、水冷20気筒3,500馬力級エンジンを排気式過給機によって高高度でも性能を引き出せるようにしている。

 ここまで重たい機体を運用できるようになったのも定方様がカタパルトを開発したからだ。

 おっと、話が逸れた。

 ともかく、哨戒機が基地に通信を送り、スクランブル発進したピジョンがここまで来る間にやっておくことがある。


「増速して高度をとるぞ。10,000mまで上昇する。私に続け」


 敵機は高度8,000mを超えると大きく運動性を損なう。

 吸入出来る酸素の量が充分でないため、エンジンの性能が発揮できないからだ。

 爆撃隊との合流高度でもあるため一石二鳥だ。

 補給路の寸断と爆撃によって希少金属が手に入らない敵はタービンを作れず、機械式の過給機を使うしかない。

 それも最近は合金の質が悪く、しょっちゅう故障して稼働率が大幅に低下したため整備が簡単な単段式しか装備されていない機体が多い。

 そのため、高度をとってしまえば敵機はヘロヘロになり簡単に撃墜できるという寸法だ。


「「「了解!」」」


「青木隊員は引き続きレーダーで監視してくれ」


「はい」


 上昇を開始してから20分、高度は4,500m上昇して10,500m。

 そろそろ敵邀撃ようげき隊が到着する時間だ。


「敵邀撃ようげき隊らしき機影を捉えました。相対速度はおよそ1,000km/hあと2分足らずで会敵します。向こうはほぼ全速飛行ですね」


 戦闘に備えて、各機増槽を投棄している。


「各機戦闘用意、射官はちゃんと動くか?」


「はい」


 これも定方が実用化した技術だ。半導体の小型化によって電算機コンピュータがかなり小さくなったため可能になった。

 見越し射撃を支援する装置だ。


「12時下方に敵機見ゆ、28機全機ピジョンと思われます! 上昇が間に合わなかったようです」


「油断するな。邀撃ようげき機は上昇力が高い」


「このまま一撃離脱ですか?」


「ああ、深入りはするなよ」


「はい」


「全機降下開始!」


 隊長の言葉を皮切りに、急角度で敵戦へ突っ込む。

 みるみるうちに速度が上がり、速度計は880km/hを指している。

 すれ違い様に口径22mm4門の機関砲を発射した。1門当たり毎分3,800発の発射速度を誇る速射機関砲が火を吹く。


「敵4機が主翼を損傷、5機が燃料漏れをおこしてます。残り19機は損傷軽微です」


「自軍の被害は?」


「田島、尾翼を損傷しました。継戦困難です」


「船越を護衛につけて待避しろ」


「船越了解!」


「田島了解! 申し訳ありません」


「いい、無事に帰れ」


 敵は反転、上昇してこちらのケツを狙っている。

 どうにかこちらを射線に捉えた数機が機銃を撃ってきた。


「あと2~3回攻撃したら一度高度をとる」


 急降下で失うエネルギーを考えるとこの回数が反復攻撃の限界だ。

 相手に後ろをとられたので回避行動をしつつ高度をあげて敵機との距離を詰める。


「お、高度を下げないのか。死守命令でも出てるのかね? そうでもなきゃ何を企んでいるのやら」


 本来、この状況であれば高度を落として戦える場所まで引きずり込むか諦めて逃げるべきなのだが、相手にはその気配がない。

 逃げられるだけなら問題ないが、下で戦うと流石に損害が無視できないものになりそうなので無理に追撃はしないつもりだった。

 しかし、そのどちらもとらないのであれば敵機はただの的だ。

 良くて時間稼ぎ位にしかならない。


「敵さんも必死ですね。まあこことられると空中給油無しで本土に届くようになるから当たり前ですけど」


 程よく高度が上がったので再突入、敵機の脇腹に向けて機関砲を発射する。

 もちろん相手も回避行動をとるが速度差が大きすぎるので間に合わない。脆弱ぜいじゃくな胴体部への被弾で敵は4機まで数を減らした。


「キレイに入ったな。もう一度入れたら高度をとる。各機しっかり距離を保て! 突入するぞ」


「「「はい!」」」


 現状では、旭日の航空優勢は圧倒的だ。


 如何でしたでしょうか? ほとんど知識無しで、どこぞのww2を舞台にしたMMO空戦ゲームを参考に書いてみました(なお、作者は動画は見るがやったことが無い模様)。

 物理法則? 歴史考証? 戦術? そんなの知りません。

 感想、誤字報告待ってます。

 第一話で作中の用語を解説しています。

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 時間があるときに更新します。

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