第2話 されど海!
ちゃっぽん、ちゃっぽん、ちゃ・・・
記憶をたどれば、たしか自分は地球の日本と言う所に生まれて、よくわからないままに、勇者として召喚されて、ちやほやされて、おだて上げられて、つい調子にのって、魔王に突撃してしまった。
あの時は、あと少しで魔王に勝てると思っていたけど、今になって冷静に思い返せば魔王はかなり余裕があったんじゃないかと。
反省しても、もう手遅れなんでこれから海としてどうすればいいか考えよう。
って、考えったって、わかるわけない海だし・・・。
そもそも今、自分がどんな状態なのか全くわからない海だし・・・。
人間から勇者に、さらに海になって、世界も転生が2回目だし、時間感覚も距離感とか大きさも東京ドームとかタバコとか比べようにも、どんな大きさだったか全くわからん。
改めてステータスを確認すると。
水魔法が使えるようだ。
水魔法:ウォーターボール ウォーターウォール ウォーターゴーレム
今のところこの3つが使えるらしい。
陸地に見える山脈に向かって、「ウォーターボール」と唱えると、思った以上にでっかい水の塊が、どごーん、と山にぶつかる、山頂付近が吹き飛ぶ。
「ウォーターウォール」と唱えると水の壁が立ち上がる、それを陸地に向けて飛ばすと、ずごごごごーん、とでっかい津波となって内陸部まで、岩やら、土砂やら巻き込みながら荒れ狂って遡上していった。
ウォーターゴーレムの魔法は水の塊が自分の分身として水面から立ち上がっていく、魔力を込めると最大で成層圏まで一瞬だけだが伸びあがっていっく、内陸部がちょっとだけ覗けた。
今はまだ、生物や植物はおろか微生物さえも、存在していないようだ、有機物が発生してから、うっかり魔法を唱えると生態系に影響が出そうだ、今のうちに魔法の練習をしておこうと魔法を唱えまくった。
いやー海のこと、なめてました、数十日間も寝ずに最大の魔法を唱え続けてもなんともない、もはや陸地は削れてまっ平になるまでになっても、魔力が切れることもないし、眠くなることもないし、疲れることもない。
これって今なら魔王に勝てるかもって、ついできないことを思ってしまう、まだ未練が残ってるのだろうか。
いつの間にか寝落ちしてた、海だから睡眠は必要ないはずなのに、うっかりすると寝ていることがある、まだ人間だった時のくせが残っているようだ、そんなある日いつの間にか有機化合物が、自分の中に、つまり海の中に漂っているのを感じた。
見つけた有機物をくっつけてみる、あっちこっちから集めて、うろ覚えでたしか、メタンとかエタンとかブタンとか、でもここは異世界だからどうなるんだろう?
しばらくはくっついて、ただよっているが、やがて分解してしまう、つなげては分解し、つなげては分解の連続で気が付くと海の中には、できかけの化合物がぷかぷかといっぱい漂っていた。
何気なく思いつきで魔力を込めてつなげてみると、いろんな化合物がうねうねと連なっていく、これって大丈夫なのか、なぜか勝手にくっついたり離れたり増殖しだした、予想外の展開にちょっとビビる。
ちゃっぽん、ちゃっぽん、ちゃ・・・
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