9話 ボーリングと特殊効果!
「素蓋さん、今日はお店主催のボーリング大会ですよ!」
ティフシーがボーリングの玉を投げるスイングをしながら、オレの部屋に入ってきた。
ワンピースの裾がふわっと広がり、オレに微風が届く。
こんな美少女が毎朝起こしに来てくれるなんて、今日も異世界は最高だぜ!
オレは爽やかな気分でベッドから出た。
「ボーリングなら、今日はまったりできそうだね~。ちなみにその大会って、オレは手伝い?」
「素蓋さんはお店の代表として、参加ですよ! 優勝してくれれば、お店の宣伝になります! シュリカさんも『素蓋くんなら優勝するでしょ』って言ってましたよ!」
「期待値高いな!」
まあ、オレの技術(テクニック)とこれほど相性のいいスポーツもないけどな!
力は必要ないし、ずば抜けたコントロールがあれば、パーフェクトスコアで優勝できるだろう。
「素蓋さん、ボーリングはハードなスポーツなので、怪我しないように気をつけてくださいね!」
「ハードなスポーツ? ボーリングだよね?」
「はい、だってボーリングですよ? 無酸素運動ですからね」
「ああ、あれね、無酸素運動ね……」
たぶんこれ、オレの知ってるボーリングじゃないな!
こうして、嫌な予感がプンプン漂っているボーリング大会に参加することになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ハッハッハーッ! ボーリング大会を始めるぞッ! みんな水着に着替えたかい?」
なんで水着!?
という疑問を抱いているのは、どうやらオレだけらしい。
「イェエエエエエイ! 準備万端さッ!」
「いつでもいけるわよ!」
「ハッハッハ! 今年は負けないぞっ!」
海パンを履いたマッチョたちや、水着の美女たちが盛り上がっている。
オレも一応着替えたけど、これでいいのか!?
「では、ペア分けをします。みなさん、くじを引いてください」
「イェエエエエエエエエエエエエエエエイ! ヒャッハァアアアアアアアアアアッッ!!! くじ引きだぜェエエエエエエエエッッッ!!!!」
盛り上がるポイントそこ!?
とりあえずくじを引いて、オレはルミラという美女とペアになった。
神秘的なブルーの髪に、ブルーの瞳。神話に出てくる水属性のキャラクターみたいな、静けさと美しさがある。
肌は青白くてひんやりしてそうだけど、『風呂上がりなのかな?』と思うほど潤っている。
なんだこのひんやりプルプルボディは!?
「こんにちは。あなたが私のペアの素蓋くんね。よろしくね」
「よろしく、ルミラ! オレ実はボーリングってはじめてなんだけど、ルミラはけっこうやってるの?」
「私は毎週やってるわ。初めてなら、ルールを教えてあげるわ」
「サンキュー!」
優しい美女がペアでよかったぜ!
「まず、このボーリングの玉はね、『フェプリオバーファ』というの。そして、プールが『アクアステージ4』。『アクアステージ4』の中には『ドレッドスティック』が十本あって、『ドレッドスティック』を『パルゼ』した本数が私たちの『サンセットスコア』になるわ」
「専門用語多いなっ!」
指輪物語か!? 説明の半分くらいしか頭に入ってこなかったぞ!
「百歩譲ってプールがアクアステージなのはわかるけど、なんで4なんだ? 1~3はどこ?」
「アクアステージは第四世代なの。第一世代からそれほど性能は変わってないけど、カメラ写りだけは世代毎によくなってるわ」
「アイフォンかっ!」
世代毎にネームチェンジしてるのか! わかりづらいな!
「まあ、簡単に説明すると、プールに潜って、ボーリングの玉を転がして、ピンを倒すスポーツよ。倒したピンの本数が得点になるわ」
「とてもわかりやすい説明だな」
ようするに、水中でボーリングをするってことか。これならなんとかなりそうだ。
「ハッハッハ! では、制限時間は一時間! ピンを一番多く倒したペアが優勝さ! レディィイイイイイイイイ! スタァトオオオオオオオオッッッ!」
マッチョの司会が叫んだ瞬間、みんな一斉にプールに飛び込んだ。
「素蓋くん、私が先に行くわ」
「おー! 任せたルミラ!」
ルミラはボーリングの玉を持ったまま、プールに飛び込んだ。
プールの底につくと、ボーリングの玉を投げる。
「おぉ~! けっこう楽しそうだな!」
ルミラはピンを八本倒して浮上してきた。悪くないスタートだ。
「ぷはっ! はい、素蓋くんの番よ」
プールから上がってきたルミラの谷間は、水を弾いてプルップルだった。
毎回この奇跡の光景を上から見れるのか!
いまこの瞬間、オレの一番好きなスポーツはボーリングになったぜッ!
「おっけー! 任せとけっ!」
オレはボーリングの玉を持ったまま、プールに飛び込んだ。
ボーリングの玉の重さで、あっという間にプールの底まで沈む。
よし、あとは投げるだけだな!
……と思ったら、酸素ボンベをつけたマッチョが、ピンを直してる途中だった。
手で直すのかよ!
マッチョはオレと目が合うと、『ゴメンね!』みたいな感じでウインクしてくる。
なんかユルい!
マッチョがピンを直したあと、オレは技術(テクニック)をフル活用して玉を投げた。
結果はピン一本残し。
水の抵抗があるから、玉のスピードが出ないみたいだ。これは重い球の方が有利だな!
オレが浮上すると、今度は入れ替わりでルミラがプールに飛び込む。
「ナイス、素蓋くん!」
「おーっ! まあね!」
ルミラは今度は七本たおした。他のチームはストライクを出してるところもあるので、オレたちのペアはちょっと遅れ気味だ。
「素蓋くん、おねがい」
「おう! ちょっと本気出す!」
オレはさっきより重い玉を持って、ルミラの胸の谷間を目に焼き付けたあと、プールに飛び込んだ。
玉が重いので、さっきよりも早く沈む。
プールの底に着くと、マッチョがすでにピンを直していて、『今度は早く直したぜ?』みたいなドヤ顔をしていた。
どうでもいいけどグッジョブ!
オレは今度はストライクを出して、浮上する。
「ルミラ、バトンタッチ!」
「すごいわ! 初めてでストライクなんてっ!」
ルミラは興奮した様子でプールに飛び込んだ。
そして、五十分後。
「こ、これは……しんどいな……」
オレたちはめちゃくちゃ疲労していた。
他のペアもすでに半分は体力が尽きて、プールサイドでダウンしている。
「ティフシーが言ってた理由はこれか……」
潜水を繰り返すだけでもキツいのに、水の抵抗がある水中で、重いボーリングの玉を投げなきゃいけない。
オレはずっとストライクを出し続けているが、体力的にはそろそろ限界だ!
「素蓋くん、すごいわ! 素蓋くんがこんなウォーターマッチョだなんて! 私達は二位だから、次に素蓋くんがストライクを出したら優勝ね!」
ルミラの笑顔はかわいい。おまけにパーフェクトな曲線美。この美女を目に焼き付ければ、最後の一滴まで元気を絞り出せる!
「じゃあ、ラスト行ってくるよ」
「うん! 待ってるわ」
オレは陸から『ラストマッスルー!』『素蓋くん、セクシーよ!』などと歓声を受けながら、プールに飛び込んだ。
残り時間は二十秒くらい。これで勝負がきまる。
オレはプールの底について、最後の一投を振りかぶった。
しかし。
「……っ!」
隣のレーンで投げようとしていたマッチョの頭上に、ボーリングの玉が見えた。
上にいる誰かがうっかり落としたな!
マッチョは気づかず、投球のフォームに入っている。
玉はマッチョのすぐ頭上だ。
助けたいが、オレがここから泳いでいっても間に合わない。
クッ……仕方ないな……。
オレは再び玉を振りかぶった。
技術(テクニック)をフル活用して、その玉を隣のレーンに投げる。
ゴガッッ!
マッチョの頭上にある玉にヒットして、二つの玉はプールの底に落ちた。
よし! なんとか成功したな!
そして、ゲーム終了のブザーが鳴った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ウワァァアアアアアアアアアアアアッッ!」
オレがプールから上がると、拍手と大歓声が巻き起こった。
プールの壁で音が反射して、耳が痛くなるほどの音量だ。
「なんというスポーツマッチョシップだァアアアアア! 彼はなんと、自分のペアの優勝を捨てて、隣のレーンのハドソンを助けたぞォオオオオオオオオッ!」
「信じられないビューティフルマッスルだわっ! 感動して涙が出そう!」
「限界まで疲労しているというのに、隣のレーンの危険に気づくなんてッ! なんというマッチョなハート! そして視野の広さだ! 彼は目の筋肉もトレーニングしてるに違いないッッッ!」
「水中で落下してきた玉に当てるなんて、ミラクルマッスルだわ! 心も体も素敵! 一度でいいから彼のマッスルに抱かれたいわ!」
「彼はたしか、シュリカさんの店で働いているボーイだぞ! さすがシュリカさん、ワンダフルなマッチョを見つけたな! 彼ほどのマッチョは、世界中探しても見つからないぞ!」
オレは最後の一球をムダにして二位になってしまったが、プールサイドからはオレへの賞賛の声が飛び交っていた。悪くない気分だ。
「ルミラ、最後の一球は盛大なガターになっちゃったぜ! ゴメンなっ!」
冗談めかして言うと、ルミラはクスッと笑った。
「かっこよかったわ! ナイスマッスル!」
ルミラはオレに飛びついてきた。
ぷるぷるに潤った肌がオレの全身に触れる。
水分たっぷりのおっぱいは、ぴったりとくっついて離れない。
ひんやりした柔らかい感触に、全身の筋肉が癒やされていく。
うおぉおおおおおおおおおおおおっ! なんだこのみずみずしいボディは!
プールサイドはさらに盛り上がり、黄色い歓声や、祝福するような口笛が飛び交う。
「ハッハッハ! では、いまから表彰式をするぞっ! 一位から三位までのペアは表彰台に集まってくれっ!」
司会のマッチョの言葉で、ルミラがオレから体を離した。少し赤くなった顔でオレを見上げる。
「呼ばれちゃったわ。行きましょう。私たちは二位ね」
「いや、ちょっといまは……」
「何してるの? 表彰台に呼ばれてるわ」
ぷるぷるボディのルミラに抱きつかれたあと、すぐ動ける男はいない。
ルミラの癒やしハグには、追加の特殊効果があるのだ!
「おぉーっとッ! マイボールをプールの中に忘れてきたぜッ!」
オレは逃げるように、プールに飛び込んだ。
そして、水中で三分間たっぷりクールダウンした。
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