第24話 抱けなくなった!

あの散骨の日以来、俺は未希を抱けなくなった。つまり性的不能に陥った。両親の祟りかとも思ったが、そんなことがあるはずがない。未希が口で試みてくれたがだめだった、


相手が変わるとできるかも知れないと風俗店にも行ってみた。でもやはりだめだった。女の身体を見ると未希を思い出してしまう。そうなるともう駄目だった。今までに欲望のすべてを、一生分を未希に吐き出してしまったからかとも思う。


「ありがとう。でもだめなんだ。あの散骨の日から」


「このままだと私は身体で返せません」


「できなくても、腕の中でおとなしく抱かれていろ」


語気を荒めてしまった。自分でもいらいらしているのが分かる。


「いいんだ。しばらくはこうして抱かれていることで返してもらえばいい」


「分かった。それでいいなら」


俺はそう言って未希を安心させたかった。未希は俺の腕に抱かれて眠った。未希の身体は温かく、俺の沈み込んだ心を温めてくれている。


今まで未希には同居させることを条件に俺の欲望をぶつけてきた。未希は同居させてもらいたい一心でそれを受け止めていた。もっと優しくできたはずだったし、優しくしてやれたはずだった。それが欲望に負けてできなかった。それでも未希は俺を必死で受け止めてくれていた。


こうして未希をただ抱いているだけでも心が安らかになる。仕事に疲れていても心地よく眠れる。俺の心を癒してくれている。


未希はどんな気持ちで獣のような俺を受け入れていたのだろう。聞いてみたいが聞くのが怖い。未希をこのまま手元に置いておきたい。俺には出した金を身体で返してもらうと言うしか思いつかない。


でも未希はいつか俺の元を去っていくだろう。その時のことを思うと、母親を失った未希の父親の気持ちが痛いほど分かる。


「未希はどうして俺にやりたい放題されても同居しているんだ?」


「おじさんは約束を守ってくれるから」


「約束?」


「私を自由にする代わりに同居させてくれている」


「それは当たり前だ。約束は守る」


「食事代もきちんとくれたし、残ったお金も私にくれた。着るものも買ってくれた。学校まで行かせてくれた」


「そんなの当然だ、同居させるとは面倒も見るということだ」


「だから安心して一緒に住める。私にはもうどこへも行くところがないから」


「俺は未希の弱みに付け込んで未希をおもちゃにした」


「それは約束だから」


「もっといい条件を出すと言う男がいたら、その男と同居するか?」


「分からない」


「このままここにいるのか?」


「身体でお金を返さなければならないから」


「こうして俺に抱かれて眠ることも身体で返していると思っていい」


「それなら気が楽です」


「借りを返し終えたら、ここをでていくのか?」


「分かりません」


ずっとここにいてくれとは言えなかった。その代わり俺は未希を抱き締めた。未希も抱き付いて来た。これでいいんだ。未希も今はこのままでと思いたかったのだろう。

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