クトゥルフ神話ぽいモノ短編集
大福がちゃ丸。
ぼくの町
ぼくが住んでるのは、漁港のある小さな町だ。
家も近所も漁師をしていて、魚を獲って生活してたんだ。
港の近くの小さな丘から見る景色が好きだった。
おじいちゃんが生きていた頃は、公害?とかで、汚かったらしい。
「これでも大分綺麗になったんだよ」と、おかあさんが言っていたっけ。
カモメが気持ちよさそうに飛び回ってるのを見ていたり、キラキラ光る水面を見るのが好きだった。
季節外れの大きな嵐が来たあの日から、変わってしまったんだ。
知ってる? 嵐が過ぎた後は、天気も海も綺麗になるんだ。
でも、違ってたんだ。
潮風が、吹かなくなった。
海の色が、黒い泥のような色になった。
町中に、何かが腐ったような臭いがするようになった。
漁で獲れる魚も変わってしまったんだ。
見たこともない魚たち。
長いモノ、丸いモノ、潰れているモノ、形はいろいろだったけど、
みんな魚の顔じゃなかった、丸く広がった目は正面について……まるで人の顔。
そんなモノ、食べようとも思わないでしょ?
でも買い取ってくれたところがあったんだ、カマボコとかハンペンとかにして売るんだって。
ぼくは、あんな魚で出来たものなんて食べたいとも思わないけど。
気が付いたのは、あの日から1か月くらいたったころかな?
父さんも母さんも友達も顔が変わってきてるんだ。
毎日顔を見てるのに気が付かなかったんだ、
父さんも母さんも友達も気にもしていないようだった。
あまり瞬きしない目は、まるで魚みたい。
ぼくの顔も変わってるんだろうな……
おかしな魚たちが獲れる量も多くなって、加工した品物も全国で売ってるみたい。
町中に漂ってたいい臭いも、隣の町にも、その隣の町にも広がってる。
この町みたいに素敵な所になるんだろうね。
久しぶりにお気に入りだった場所に行ってみたんだ。
泥のような海の色も、うるさい鳥も居なくなった海は、
なんて綺麗なんだろう!
そして、ぼくは、見てしまったんだ。
沖に広がる穴を。
わかってるよ、海に穴なんて開くわけないんだ。
でもね、そこだけ色が無くなってるんだ、まるで、そこだけ何も無いみたいに。
それにね。
その穴の奥に動く、ミミズのようなヘビのようなタコの足のような。
あぁ、ナんて素敵なんダろう!
いツの日かあの穴カら出てきて、世界中がコの町みたイに素敵な所にナるんだ!
ボクハ、いつマでモいつまデも、コのすテキな風景ヲ眺めてイた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます