007:『紙と絵の具と色使い』
やあ、久しぶりだね。そこまで久しぶりじゃないって? 久しぶりで良いんだよ。それが正しい。
この物語はあまりにも外れている。そう、【普通じゃ無い】
普通と言っても、一般の人々を対象とした場合の【普通じゃ無い】
だが、もしかしたら私の様に一般の【普通】から掛離れる【普通】を持っている人なら、理解の範疇にあるのかもしれない。
5の次が何故に7なのか...それは気まぐれだ。
気まぐれと言っても故意的な気まぐれではあるが。
先にも言った様に、私は【適当】なのだよ。
【適当】という言葉は聞こえが悪い。なんとも誤解されやすい言葉だ。
【適当】と聞けば大体の人は、大雑把、いい加減、なげやり、といった風な捉とらええ方をしてしまうだろう。
しかし、大体の人はその【適当】の本来の使い方、意味を知っている。にもかかわらず正しい理解をしようとはしない。
これは人間世界にも言える話だと私は思うのだ。
その人の本当の性格を知っているにもかかわらず、皆がそうするから自分もそうする。その人は悪くないというのに皆が悪いというから悪者になる。
私はそういうのが一番嫌いなんだ。そういうのには自分の意見が全く無い。流され、染まる。
まぁ、それも一つの生き方なのだが、私の生き方の道には、その様な分かれ道は無かった。と、いうだけだ。
皆に一つ問う。例えば二時間という何も無い時間が有ったとして、君は何をする?
ある人はこう答えた。【寝る】と。そしてある人は【鍛える】と。さらにある人は【遊ぶ】と。
誰一人間違ってはいない。しかし誰一人正解では無い。
そもそも正解など存在しないからだ。
二時間と提示したが、それは二時間後を終わりとした場合だ。一時間では物事を成すには少しばかり短過ぎるという私の考えだ。
二時間あれば大抵の事は済むだろう。この場合、零を初めとし、二を終わりとする事になるが、決して一を蔑ないがしろにしている訳ではない。
一が無い事には、二は存在するはずは無いのだから。
二を終わりにしたのには特に理由は無い。終わりなんて無いのだから。
数字に終わりが無い様にね。
終わりなど人が定めたくだらない限界値に過ぎないのだよ。
『まだだ...まだ...もう少し様子を見るとするか...』
「...や」「..うや!」「灯夜!!」
「はっ!! ...ここは何処だ?!」
「灯夜の家だよ。昨日頑張り過ぎたから疲れて寝ぼけてるんじゃないの?」
「昨日? ああそうか...昨日の事か...」
「昨日は灯夜凄かったよ。ちょっと見直した」
「昨日は私の完敗です。お見事でした」
ん? こいつは...あぁ、そうかこいつ、俺ん家に住むとか言って本当に来やがったのか。
まぁ、美月もこいつも、家族に見える事は無いのだから、そこらへんは心配することは無いが、いったい何処で寝るんだよ...
「お前、俺ん家に住むのは良いが、いったい何処で寝るつもりなんだ」
「心配ご無用です。灯夜殿と一緒に寝ますので」
「ちょっ!! ちょっと待てよ!! 一緒ってお前!!」
「灯夜...何かいやらしい勘違いしてるよね」
「いやらしいだなんて!! おっ!! 俺は何も勘違いなんか...」
「灯夜殿、私は昨日の一件から、灯夜殿がお望みであれば命でさえも捧げる覚悟であります。故ゆえに体などすでに捧げたも同然。お好きになされよ」(脱ぎ脱ぎ)
突然服を脱ぎだした。
一気に下着姿になった。
「いやいやいや!! そっそんな要求はしない!! ...たったぶん...とりあえず服を着ろ」
渋々と、残念そうに服を着る。
「灯夜ー!! 景ちゃんは私と灯夜の中で寝るから安心して」
そう、昨日対峙した天鈿女アメノウズメと名乗る女の、もう一つの名前は清春きよはる 景けいと言う。彼女もまた、元人間だ。もとは普通の高校生だったのだと言うのだが...
「時に景さん」
「景で良いです。と、言うより、景とお呼びくだされ灯夜殿。ところで何でしょう灯夜殿」
「じゃあ景で。景は高校生だったと言っていたが、何年生なんだ?」
「高校二年生です。いや、だったと言うべきなのだろうか」
「なんだー、景ちゃん私と同い年だったんだー」
「ちょっ!! ちょっと待て美月!! 景が高校二年生なのにも驚いたが、おっ!! お前...」
「なーに? 灯夜?」
美月は意味深な微笑みを俺に見せた。
「確かに、俺は美月に年齢を聞いてはいなかったが!! お前、俺の一つ下なのか?!」
「そうだよー言ってなかったっけ?」
「聞いてない聞いてない聞いてなーい!! この小動物みたいな奴が、俺と一年しか生まれが違わないなんて...てっきり小学...」
(あれ? ...美月? 何でそんな怖い顔...)(ごめんなさい!!)
「灯夜!! 失礼だよ!! 本当に!! 私は元人間だし小学生でもない!!」(小動物だなんて...)
「いやー、本当に悪かったと思っているよ」
「美月殿!! 私も美月殿に謝らなくてはならないようだ」
「景ちゃん?! 景ちゃんは何も悪い事はしていないと思うけど」
「そうだな。俺から見ても景は、悪い事をしたようには見えないのだが...」
「いや、私は謝らなくてはいけないのだ。なぜなら、美月殿があまりにも愛らしく、言葉を話す新種の子猫か何かだと勝手ながら思っていたのだ」(まさか元人間だったとは...)
「景、それは流石に酷過ぎる目をお持ちだ...知り合いに眼科が居るのだが一度見てもらうと良いと思うよ」
「二人共ふざけすぎだよ」
「ゴメン美月、悪かったよ」
「私も陳謝する。申し訳無い」
陳謝って...
「もう良いよ。灯夜がアイスおごってくれるから、景ちゃん一緒に食べよう」
「いや、奢おごるとは一度も言っていない」
「灯夜殿、ご馳走になる」
「いやいや、まだ何とも言っていないのだが...まぁいいか」
俺が奢ると言うより、この場合は美月の口が奢っている。が、正しいな。
そんな感じで俺達は、昨日景と闘った公園で昨日の様にアイスを食べている。
この光景も他の人から見たら、俺が一人でベンチの隅で小さくなってアイスを食べている様にしか見えてないのだろう...俺って惨みじめだな
「なぁ景?」
「何でしょう灯夜殿?」
「そういえば昨日、俺達の事を変わった呼び方していたよな?」
「変わった呼び方...? あぁ、おそらくは思兼神オモイカネ、月讀ツクヨミの事でしょうな」
「そうそう、オモイなんとかとツクヨミだったかだよ!! それ何なんだ」
「私も気になる気になる」
「私達、色は【神】だという事はご存じだと思います」
「あぁ、それは知っているが」 「私が教えたー」
「私達【神】の間では、お二人の事を呼ぶのに灯夜殿を思兼神オモイカネ、美月殿を月讀ツクヨミ、と呼んでおります。私も詳しくは知らないのですが、かつては八百万やおよろずの神々として仲間だったと聞いております」
「八百万の神々と言えば日本神話だな」
「じゃあ、私達が反逆者ってどういう事なの?」
「これも私は詳しく教えられてはいないのですが、誰かと手を組んで我々を潰そうとしていると聞きました」
「何なんだその訳わからない理由は!! ボスは何処に居るんだ? 話し合って来る!!」
「それは叶わぬ願いです。私もお姿を拝見した事はございません。色の石がテレパシーの様なものを受け取り、私はそれに従う事しかできません。しかし、お二人が石を封印してくださったお陰でようやく開放されました。本当に感謝しております」
「でも、石を封印したせいで、景は戦う事も出来なくなったんだろ?」
「私はもともと闘いなどしたくないですから」
「それならいいが...」
「神に、石に、色...何か変な組み合わせだよね灯夜」
「私も、何故神となり石を持ち、色を放つのか、と気になっておりました」
「確かに、俺達が何でこうなったかは分からないけど、神、石、色の組み合わせなら何となく意味が分かる気がするんだ...」
「灯夜殿!! それはどういう事か?!」「灯夜もったいぶらないで教えてよ!!」
「いやぁ...教えると言っても、俺の仮説だが...」
「「お・し・え・て!! 灯夜」殿」
「分かった分かった!! 頼むから離れてくれ! じゃあ俺の仮説を説明する」
「「ゴクリ」」
二人に仮説を話した。しかし、この仮説が万一当たっていた所で、何故そうなったかは誰にも分からないだろう。
何故自分という人格が有るのか、と問うのと同じ事だ。
たまたまそうだった。としか言い様がないからだ。
俺の仮説はこうなる。
石とは、前に美月から聞いた事があるが、【意思】の事だ。
人が、ある条件を満たし、意思を持つと同時に、色の【石】を持つ。石とは絵の具の様な物と捉える。
どういう事かと言うと、石は砕き、絵の具として絵を描くのに使われる事が有る。と、いうところから考えは始まったのだ。
絵を描くには紙が必要になる。つまり神とは、【紙】の事。
ようするに、人は神となり石を持ち色を放つとは、存在という紙に意思という絵の具で、自分という色を塗る。と、俺は仮説を立てた。
しかし、ただの仮説だ。さっきも言った様に、この仮説が正しかったとして、たまたまそうだったに過ぎない。
この仮説はただ、神、石、色というこの三つを繋ぐ為だけに俺が考え出した仮説なのだ。
ん? ...「みーつき!! けーい!! どうしたんだ二人共!? その顔はちょっと放送出来ないレベルだぞ!! すみませーん、誰かモザイク入れてください!!」
と、美月も景も、俺の仮説を理解する為にしばらくの時間が掛かりそうなので、無駄な時間は省きましょう。
では次回6話でお会いしましょう。...6話?
今回は7話だよな...すみません。6話を飛ばしてしまったようですね。
じゃあ、今回の話は後日談という形になってしまったようですね。
まぁ、ご容赦ください。では次回6話でお会いしましょう。
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