考えても仕方ないことだから考える
あんどう
第1話
生まれる前からそうそうないというよりあってはいけない環境にばかり置かれてきた。
年齢は大人になった今だからより思う。
どうしてこんな目に合って来たのかと考えれば理由はひとつで、だが恐らくそれを言えば、いい大人がいつまでもそんなことを、だとか、いつまで人のせいにしているのだ、だとか、そんな環境でも愚痴も言わず立派に生きている人はいる、というようなことばかり言われるとしか想像できない。だから言えなかった。
それでもそんなことを言う人間こそ、自分は絶対にと言っていいほどそんな境遇に置かれていた部分も時期も一切なく、他人の言うことには耳を傾けようともせず反射的に否定的な言葉を言いたいだけ、という場合ばかりなのだ。
それも今は分かる。
それでも言えなかった。
でも、無かったことにされたくない。すべては実際にあったことだ。自分だけが苦々しく体験してきたことで自分以外の他の誰も一切困りもしなかったから無かったことにされてきているけれど、自分は無かったことにされてよい、と思ってなど一度もいなかった。
自分の心さえなければ他の誰も困らないのだ、なぜ自分に心があるのかと日々思っていた時もあったけれど、それが正しくないことも今は分かる。
被害者意識ばかり大きくみっともないと、どこかの誰かが非難する声がどうしても反射的に聞こえてきてしまうような気がしてこんな言い方をしていいのかと戸惑いもするが、それでも誰も私の気持ちを大切にしようともしなかったからそう考えさせられていたとしか言えない。それがただ事実だった、と今はただ感じる。
どこから整理していいのか分からないまま、それでも書き留めて行きたい気持ちがずっとあって、それでもどこかの誰かが非難する声を事前にまず想定してしまって、書き留めることすら出来ずにいた。
正確に言えばブログを非公開に設定して言葉を連ねるようにしてつけていた時もあったけれど、どこかの誰かが非難する声をまた勝手に気にして調べてもいないにしろそもそも有名人でもない者の文にアクセスもないだろうというのも自分で分かっていたけれど、それでも何か声を上げれば内容も聞かず自己責任の名のもとに否定されるとしかどうしても思えず、非公開にしただけでは不安で、ぐちゃぐちゃとした思考で幾重にも幾重にもがんじがらめのパスワードをかけてしまって自分ですらもう開けなくて、そのブログはどこかにいった。バックアップもとっていない。そんな内容をバックアップを取ることすら苦痛でしかなかった。見たくない内容としても、見返せもしない事態になったことは後悔はしているけれどどうにもならないのでそういうものを連ねていたという記憶だけを、内容とその時それを記していた自分の状況と合わせて胸の中に残している。
そのあたりから数えてももう十年以上経って、十年経とうと自分が嘗めさせられた苦渋はそのまま誰が当然贖うでもないのでそのままで、だから気持ちもそのままだ。
それでも十年以上の年月を経て、自分の生涯の残り時間がそれだけ減ったことだけは理解できるので、このまま無かったことにされたくない気持ちだけは大きくなっている。もうあれらは取り返しがつかないということを改めて強く自覚させられることも多い。
誰のためでもない文章を書いてどうするのか、読み手を意識した形式にしないでどうするのか、という気持ちも強くあるのだが、それでも結局何も書けないより思いつくことからでも書き留めていくことから始めるしかないのではないか、とそこまでも何度も考えをなぞり、それでも何も出来ないでいた。
それでもどうしても無かったことにされたくない。その気持ちが強くて、日々を暮らすのも息をするのもままなっていない。
だからただの覚え書きでも、思いつくことを書いてゆくしかないとまた思考をなぞっている。そして今は頭の中でなぞるだけでなく文章にもしてみている。
それでもどこから書くのがいいのか分からない。分からないからひとつひとつ考えて文に出来ることを書き留めてゆくしかないだろうと自分に言い聞かせている。
大人になってこんな思いで生きなければいけないなんて流石に想像もしていなかったが、そもそも子どもの頃からどういう大人になりたいと想定できるような環境でなかったことだけは確かだ。今になって俯瞰で見るから明確にそう言える。
だからその話から書くしかないのだろうか。
そういう風に同じようなことを繰り返し自分に言い聞かせて、書き出そうとしている前書きみたいなものが、ここまで。
次を書けるようにしたい、というのが今の気持ちなのだろうというところで最初の章みたいなものを結んでみる。
次を書けるようにしたいです。
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