第二話. 性の境界から学びを得る。 〜大学時代〜

 そんなこんなで漫画を通し、“モノづくり” という人生を奮い立たせるような生き甲斐に覚醒し始めた時、高校卒業の時期を迎える。「漫画なんか描いてたら女の子にモテない!」という考えのもと、一切の迷いなくペンを置く。オートバイで日本を走る、を公式の趣味とした上、“男女交流の聖地” とどこからか聞いた、テニスサークルへ入部。


 ところが、全くモテない。おかしい。ちゃんとオタクから足を洗い、髪の毛だってライトブラウンにした。言葉づかいだって、ちょっと悪さを感じながら、丁寧なラインはギリギリ守っているのに。


 テニスサークルに入っても、テニスがうまくないとモテない。ということに、卒業後に気づいたのは、また別のお話し。(それ以外にも、たくさんあるだろうけど……)


 そんなこんなで状況も特に変わらず、大学3年の夏。「うちのサークルでオリジナルTシャツをつくりたい。誰かデザインしてくれる人はいないか」という話がリーダー的存在の人物から出てきた。


  *  *  *


 モノづくりの楽しさを多少なりとも知っている自分。少し興味を持ったけれど、「どうせそんなことしてもモテないし……」と聞き流していた。結局、誰からも手が挙がらない。


 皆で一緒に合宿で着る、という目的とスケジュール程的な問題もあり、「Wordかなんかで打ち込んだフォントをそのままプリントすればよくね?」というイケイケな発言が渦を巻き、それが見事に実現されようとしていた。


 ここで自分の中で疑問が湧く。それは正しいモノづくりか? オリジナルといえるのか? 小学校時代、中途半端なイジメを受けていた。クラス全体の見て見ぬふりが大嫌いだった。その自分自身が、まさに見て見ぬふりしようとしている……。そもそも、小ロット数で1枚あたりが高価なそんなTシャツにお金を払いたくない。


 もう既に自分の中では、モテる/モテない、という次元の問題ではなくなっていた。そうだ、モノづくりの楽しさ。あの経験を今、生かすべきだ。自分の中で何かがハジけた。赤い実 ではない。赤い実は遠い昔。幼稚園の時、容姿の綺麗な先生を見た瞬間にハジけた。入園式のタイミング、でだ。


 ハジけたのは、白い実とでもいうべきだろうか。これからの人生を大きく変える、ターニングポイント。「シ・ロ・イ・ミ」。それがハジけたのだ。会議中の教室内。前触れもなくいきなり席を立ち、大きい声で皆に向かって、


「ちょっと待った!!!!!」


 と言えるわけもなく、「オ、オレ、昔イラスト(※)とか描いてたから、なんていうか、Tシャツ……オレ? がつくれば、もうちょっと……もうちょっと、いいのはできると思うんだけど……」とリーダー的存在の人物に、影でゴニョゴニョと伝えることに成功したのである。(※ “イラスト” を “漫画” と伝えないとこがポイント)

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