名所
我が家が名所になってしまった。
始まりは二年前の冬のことだった。
家に帰ってみると玄関の前で知らない女が血を流して倒れていたのだ。
すぐに救急車を呼んだが、結局その女は助からなかった。
警察の調べで、その女はうちから遠く離れた地に住んでいたことがわかり、もちろん私とは縁もゆかりもないことが確認された。
事件性もなく、我が家は不幸にも偶然巻き込まれただけだろうということで決着した。
しかしそれは始まりだったのだ。
その後、何度も、居間で、風呂で、キッチンで、階段で、知らない人間が倒れているのを私は目撃することになったのだ。
もちろん戸締まりはしっかりやっていたし防犯会社に相談し厳重に対策を取ったが無駄だった。
もちろん警察もこれを偶然だとは思わず私は疑われ徹底的に調べられた。
しかし彼らと私の接点は何一つ確認されなかった。年齢も性別も立場も違う彼らがなぜ人生最期の場所に我が家を選んだのか誰にもわからなかったのだ。
私は引っ越した。おそらくあの家はもう売れないだろう。更地にしてほとぼりが覚めた頃に売り払うしかない。
なぜ私ばかりこんな目に合うのか。
ため息混じりに私は新居の鍵を開けドアを開けた。
知らない婆さんがゆっくり回りながらゆらゆら揺れていた。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます