耳元で声がすることがある。


 びっくりして振り返ってみても誰もいない。


 内容は毎回違っていて愛の告白だったりただの呼び掛けだったり意味のわからない単語だったりする。


 年齢、性別も様々だ。若い女性の時もあれば年老いた男性の声の時もある。


 いったい俺にどうして欲しいのか。会話ができるわけではなく本当に一言、耳元で呟かれるだけなので正直イライラする。


 そんなことを思いながら街の中を歩いていた俺は心の中で「畜生」と呟いた。


 声には出さなかった。間違いない。それなのに。


 俺の周りにいた通行人たちが同時にこちらを振り返った。





                (了)







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