11月8日 手つなぎ
三年生のまつりちゃん、一ヶ月ほど前に左手の小指を骨折してしまいました。
十月末にドッジボール大会を控えていたので、その練習で怪我したのかと思ったら遊んでいて転んだ時にやってしまったらしい。
「手を下げてると腫れてくるんだよね」と言って、いつも心臓より上にくるようにしていました。
この日、学校前の横断歩道でふと見ると包帯をしていません。
「お、治ったの?」
「ううん。痛くなくなったから取っちゃった」
「えー大丈夫なの? お医者さんに怒られちゃうんじゃないの」
「へーき、へーき」
そう言って話をしている間にも、こどもたちが横断歩道を渡っていきます。
「おはようございます」
声掛けしている合間に、まつりちゃんは他の登校班にいる姉弟のことを話してきます。そちらにも応えながら挨拶を続けていたら、まつりちゃんがすっと私の右手を握ってきました。
包帯の取れた左手で手をつないでいます。
「おはようございます」
「きっと二人は勘違いしてるんだよ」
「そうかもね。おはようございます」
「登校班の人たちも、どうせ遅れてるんだと思ってるんじゃない?」
「たぶんそうだろうな。お互いに勘違いしてるんだね。おはようございます。いってらっしゃい」
挨拶の合間に続いた会話の間、ずっと手を繋いだままでした。
まつりちゃん。こんなふうにしているから他の子からお父さんだと思われるんだよ。
おじさんはうれしいけれどね。
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